リアルタイムキネマティックGPSをレベルセンサとして用いた均平作業
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要約
リアルタイムキネマティックGPS(RTKGPS)をレベルセンサとして用いてレベラを位置制御して均平作業を行うと、従来のレーザ方式での圃場ごとの煩雑な機械設置手間がなくなり、広域での効率的かつ高精度の均平作業が可能である。
- 担当:農業研究センター・機械作業部・水田作機械化研究室
- 連絡先:0298-38-8812
- 部会名:作業技術
- 専門:機械,作業
- 対象:稲類,農業機械
- 分類:研究
背景・ねらい
水稲直播栽培では、出芽苗立ちの改善や除草剤の効果維持のために、圃場の高精度均平が必要になってくる。特に区画の大きい水稲直播圃場では均平作業を2~3年に1度実施しなければならず、圃場を多数管理する大規模経営では作業負担が大きくなっている。
そこで高精度化と低価格化が急激に進んでいるGPS(全地球測位システム)をレーザ発光および受光装置の代わりに用い、効率的かつ高精度に行える均平作業技術を開発する。
成果の内容・特徴
- 本均平制御システムは、RTKGPS,制御バルブ付き油圧系,トラクタ+レベラで構成される(表1)。
GPSレベラによる均平作業の優位点は以下の通りである。
- 均平しようとする田面の高さの計測と、最終田面高さの設定が簡単になる。
- レーザレベラの近接圃場で利用時に生じやすい混信による誤動作がない。
- 分散した圃場で均平作業を行う場合、レーザレベラでは500m以上になると地球球面 の影響が生じるため発光器の移設が必要になるが、移設の必要がない。
- レーザは霧など発生すると到達距離が短くなるが、GPSレベラでは問題にならない。
- RTKGPSによる均平作業の方法は以下の通りである。
まず田面の計測はGPSをトラクタに取り付けて圃場の中を走行することによって行う。次ぎに、センサからの信号レートを1Hz(垂直方向精度
は±2cm)、制御信号を5Hzで発生させ、レベラ部にとりつけたRTKGPSの3次元位置信号を入力し、センサフィードバック系により、5段階ステップ
制御を行う(図1)。標高データは外挿して補間する。
- RTKGPSによる均平作業により周辺部の一部を除いて±2.5cmの田面の均平を得ることができる。ジオジメータ(精度1mm)を用いて測定した。均平作業前
(図2)、
均平作業後
(図3)
の田面のプロファイルを示す。30a圃場の均平作業に要する時間は約2時間である。
成果の活用面・留意点
- 均平作業後の標高は周辺部の一部を除いて基準点から±2.5cmの範囲に収まるので、直播栽培をはじめとして精密な用排水管理が必要な場合に有効である。また、簡単に等高線マップを作成することができるので、簡易な運土量計算にも使用できる。
- オンオフバルブ付きの油圧系のトラクタでは、その走行速度はオーバーシュートが起こらない約1.6m/秒以下とする。なお、現在市場に普及し始めている、より高速・高精度のGPSと、安定した基地局からのデータリンク(VRSなど)を用いればこの問題は少なくなる。
具体的データ

表1均平制御システムの構成

図1全体図:56kW(75馬力)の装軌型トラクタにGPSレベラを使用した例
図2均平作業前の圃場プロファイル

図3均平作業後の圃場プロファイル
その他
- 研究課題名:高精度自動耕うん整地法の研究
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成11年度(平成10~12年)