イネ胚における遺伝子発現の三次元解析法
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要約
連続切片の二次元画像のセットから三次元モデルを構築する情報処理手続きを考案し、イネ胚におけるホメオボックス遺伝子OSH1の発現の三次元解析への適用条件を検討しながら、ソフトウェアの開発を行った。
- 担当:農業研究センター・研究情報部・特別研究員
- 連絡先:0298-38-7025
- 部会名:情報研究
- 専門:情報処理
- 対象:
- 分類:研究
背景・ねらい
生物の三次元構造を把握するため,従来より,連続断面を元に再構成して図示する方法が用いられてきた。近年、共焦点レーザー顕微鏡並びにwhole
mount in situ
ハイブリダイゼーション法の開発によって、試料を破壊することなく遺伝子発現の三次元構造を観察できるようになった。しかし、植物においては、細胞壁の存
在によって、これらの技術を有効に適用することが出来ない。そこで、本研究では、連続切片の二次元画像のセットから三次元モデルを構築する情報処理手続き
を考案し、イネ胚におけるホメオボックス遺伝子OSH1の発現の三次元解析への適用条件を検討しながら、ソフトウェアの開発を行った。
成果の内容・特徴
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用いた情報処理手続きは以下の通りである。ホメオボックス遺伝子OSH1のin situハイブリダイゼーションを行ったイネ胚の顕微連続切片写真を、スキャナを用いて計算機に取り込んだ(
図1
a)。
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ここから、色相・明度・彩度の各指標によって、胚の外形及びホメオボックス遺伝子OSH1が発現している領域の二値抽出を行った(
図1
b)。
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標識密度の低い領域の標識を除去した(
図1
c)。
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次に、膨張収縮の画像処理を繰り返して、穴埋めを行った(
図1
d)。
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4の処理後の標識画素から輪郭を抽出してスムーズ化した(
図1
e)。
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以上の手順で、連続切片のそれぞれについて輪郭を生成した後、連続する輪郭を三角形により接続していくことで三次元の骨格モデルを生成した(
図2
a)。
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完成した骨格モデルから表面を生成して、三次元モデルをディスプレイに投影した(
図2
b)。投影の際には、上方から光を照射した様な陰影付けを行った。任意の方向からディスプレイに投影して観察できる。
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これらの手順は、すべて一本のソフトウェア上にプログラムされている。
成果の活用面・留意点
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開発したソフトはイネ胚だけでなく、様々な三次元構造の連続断面に適用できる。
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ミクロトームで切片作製時に、各切片の方向がずれている場合にも適用できる。
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本ソフトウエアの利用希望者は開発者に連絡する。
具体的データ

図1.切片二次元画像の例。受粉後5日目のイネ胚の31枚の連続切片のうちの1枚について胚全体(1)及びOSH1遺伝子発現部分(2)について領域の抽出を行った。a-eの手順は成果の内容・特徴を参照。

図2.三次元モデルによる立体の再構成。

図1で抽出した胚全体とOSH1遺伝子発現の輪郭から三次元モデルを骨格モデル作成し(a)、これから表面を生成してディスプレイに投影した(b)。棒は100_mを表す。
その他
- 研究課題名:仮想現実手法を用いたイネ各器官の形態形成における遺伝子発現解析法の開発
- 予算区分 :科学技術振興事業団科学技術特別研究員
- 研究期間 :平11年度(平10~12年度)