加工適性の高い低アミロース水稲新品種候補系統「北陸180号」
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要約
「北陸180号」は寒冷地南部における熟期が晩生の晩で、やや短稈、偏穂数型、多収の低アミロース系統である。玄米は白濁し、炊飯米は柔らかく、粘りが強い。粘りの弱い米との混米、無菌包装米飯、団子・米菓等への加工利用が期待される。
- 担当:北陸農業試験場・地域基盤研究部・稲育種研究室
- 連絡先:0255-26-3239
- 部会名:作物生産
- 専門:育種
- 対象:稲類
- 分類:普及
背景・ねらい
わが国の食料自給率は低い水準にあるにもかかわらず、米の潜在的な需要・供給のアンバランスは今後も拡大する傾向にあり、需給の均衡化を目指す必要がある。また、消費ニーズの多様化から各種の調理、加工に適した米の開発への要望が強くなってきており、特に栽培特性の優れた低アミロース米への要望が強い。そこで、新たに「日本晴」熟期の低アミロース品種を育成し、寒冷地南部から温暖地の栽培地帯に普及を図る。
成果の内容・特徴
- 「北陸180号」は昭和61年に北陸農業試験場において晩生で多収の低アミロース品種の育成を目的として晩生、多収の「北陸127号」を母とし、極早生の低アミロース系統「道北43号」を父として交配した後代から育成された系統である(表1)。
- 出穂期、成熟期は「日本晴」並かやや早く、同じ“晩生の晩”に属し、「日本晴」に比べ稈長はやや短く、穂長、穂数はほぼ同じで、草型は“偏穂数型”である。耐倒伏性は“やや強”で、やや多収であり、「ソフト158」よりやや晩熟で、多収である(表1)。
- いもち病抵抗性遺伝子型は“Pia”と推定され、葉いもち、穂いもち圃場抵抗性はともに“中”、白葉枯病圃場抵抗性は“中”、穂発芽性は“やや易”である(表1)。
- 白米のアミロース含量は約8%(「日本晴」の1/3程度)で、「ソフト158」より約2%低く、玄米は白濁し、玄米品質は“中上”である(表1)。炊飯米は柔らかで、粘りが強く、糯臭は少なく、食味評価は“上下”であるが(表1)、粘りの弱い品種との混米で程良い食感となる(データ省略)。
- 糊化特性のブレークダウンが大きく、米飯物性も食味に良い傾向を示し、特に米飯を冷却した後もコシヒカリ等の一般品種に比べ硬くなりにくく、粘りも強い(表2)。このため無菌包装米飯に向くほか、団子、米菓、アルファ化米粉等の加工利用にも向く(表3)。
成果の活用面・留意点
- 「北陸180号」の特性から、「日本晴」等の熟期の作付けが可能な北陸、東北南部、関東以西の広い地域に適応し、「ソフト158」と「柔小町」の中間熟期の低アミロース品種として活用が期待される。
- 刈り遅れ、穂発芽の発生等による品質低下、胴割れ粒の発生に留意する。
- 育成地では栽培年次によってアミロース含量が5~12%の範囲で変動したことから、栽培地帯においてもアミロース含量を把握し、品質・食味の向上に努める。
具体的データ



その他
- 研究課題名:寒冷地中南部向早中生水稲品種の育成及び選抜法の開発
寒冷地南部向き新形質・超多収品種の育成
寒冷地南部向き安定良質、良食味、直播など機械化適性品種の育成
- 予算区分:経常・新形質米・次世代稲作
- 研究期間:平成12年度(昭和61~平成12年)
- 発表論文等:なし