大粒・低グルテリン米水稲新品種候補系統「北陸183号」
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要約
「北陸183号」は寒冷地南部における熟期が早生の晩で、やや短稈、偏穂重型、大粒、多収の粳種である。白米中の易消化性タンパク質であるグルテリン含量が少ないことからタンパク質摂取制限の必要な慢性腎不全患者の食事療法への利用が期待される。
- 担当:北陸農業試験場・地域基盤研究部・稲育種研究室
- 連絡先:0255-26-3239
- 部会名:作物生産
- 専門:育種
- 対象:稲類
- 分類:普及
背景・ねらい
わが国の食料自給率は低い水準にあるにもかかわらず、米の潜在的な需要・供給のアンバランスは今後も拡大する傾向にあり、需給の均衡化を目指す必要がある。また、国民の食生活の変化にともない糖尿病等に起因する腎臓病の患者も増加する傾向にある。そこで、米のタンパク質組成を改変し、易消化性タンパク質であるグルテリン含量の低い水稲品種を育成し、タンパク質摂取量を制限する必要のある腎臓病患者への食事療法に活用を図る。
成果の内容・特徴
- 「北陸183号」は平成3年に北陸農業試験場において極大粒、極多収の低グルテリン米品種の育成を目的として農業生物資源研究所放射線育種場育種法第一研究室より分譲を受けた低グルテリン米系統「NM67×NM(1-3)」(後のLGC-1)を母とし、当場育成の極大粒系統「北陸153号」を父として交配した後代から育成された系統である(表1)。
- 出穂期、成熟期は「ひとめぼれ」よりやや遅く、"早生の晩"に属する粳種で、「ひとめぼれ」に比べ稈長は10cm程短く、穂長は1cm程長く、穂数はやや少なく、草型は"偏穂重型"で、極多収である。耐倒伏性は"やや強"で、直播栽培も可能である(表1)。
- いもち病抵抗性遺伝子型は"Pia"と推定され、葉いもち・穂いもち圃場抵抗性は"中"、障害型耐冷性は"やや弱"、穂発芽性は"中"である(表1)。
- 玄米は大粒で、品質は劣り"中下"、食味は年次、栽培地により変動しやすいが、「ホウネンワセ」より劣り、"中上"であるが(表1)、粘りもあり食感は一般品種と大差ない。
- 白米中(90%搗精)のグルテリン組成は約20%(ひとめぼれの約30%)と低い(図1)。
- 「北陸183号」を用いて食事療法を行った場合、腎臓病患者の腎機能低下を抑制する効果は「LGC-1」と同様で、患者の腎機能を維持することが可能なことが多い(図2)。
成果の活用面・留意点
- 「北陸183号」は「LGC-1」の栽培が困難な寒冷地帯でも作付が可能であり、「ひとめぼれ」等と同じ熟期の作付けが可能な北陸、東北中南部、関東以西で、冷害の心配のない地域に適応する。
- 病態食向け米としては大粒であることから一般品種との識別が可能であり、またタンパク質含量を下げるために高度搗精を行ってもある程度の粒大を確保できる利点がある。
- 適正施肥、いもち病の適期防除に努めるとともに、刈り遅れ、穂発芽の発生等による品質低下に留意する。
- 種子および米の管理に留意し、異品種の混入を避ける。
- 腎臓病患者への病態食に活用する場合には専門の医師、栄養士の指導を受ける。
具体的データ



その他
- 研究課題名:寒冷地南部向き新形質・超多収品種の育成 寒冷地南部向き安定良質、良食味、
直播など機械化適性品種の育成
- 予算区分:新形質米・次世代稲作
- 研究期間:平成12年度(平成3~12年)
- 発表論文等:なし