水稲稈長の年次変動は,穂首分化期頃の葉面積指数と密接に関連する

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

水稲稈長の年次変動は,穂首分化期頃の葉面積指数や葉色(SPAD値)と密接に関連する。そして,穂首分化期頃の葉面積指数は,春先の入水前約1ヶ月間の積算降水量と高い負の相関関係が認められる。

  • 担当:北陸農業試験場・総合研究部・総合研究第1チーム
  • 連絡先:0255-26-3218
  • 部会名:作物生産
  • 専門:栽培
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

毎年,同じ様な肥培管理で水稲を栽培しても,栽培年次によって稈長が変動し,倒伏の程度も異なる。近年,半矮性の優良品種が育成されているが,稈長が長く倒伏しやすい「コシヒカリ」の栽培面積は多い。そこで,水稲稈長の年次変動要因を明らかにし,肥培管理技術に活用する。

成果の内容・特徴

  • 同様な肥培管理で栽培した場合(作況試験)の稈長の年次変動幅は,「コシヒカリ」では9.9cm,「越路早生」では15.7cmであった(1988~1994年,表1)。
  • 成熟期の稈長は,穂首分化期頃(補葉齢3.0)の葉面積指数と正の相関関係(r=0.879**~0.914**)が認められることから,下位節間の伸長開始時期に葉面積指数が高い年ほど稈長は長くなる傾向にある(図1,図2)。また,穂首分化期頃の葉色(SPAD値)と成熟期の稈長との間にも正の相関関係が認められる(図1)。
  • 穂首分化期頃の葉面積指数は,「コシヒカリ」では移植後この間の平均日平均気温と高い相関が認められるが,平均日射量とは相関は低い。「越路早生」ではいずれも相関は低い(表2)。一方,穂首分化期頃の葉面積指数は,両品種とも入水前約1ヶ月間(4月7日~5月5日)の積算降水量と高い負の相関関係(相関係数は,「コシヒカリ」で-0.740,「越路早生」で-0.816*)が認められる(図3)。
  • 既往の知見では,入水前の春期雨量が少ない年には乾土効果が発現し,土壌窒素供給量が多いとされている(中鉢ら 宮城農セ報 61:33-44).したがって,入水前の積算降水量が少ない年には土壌窒素供給量が多くなり,それが穂首分化期頃に葉面積指数を増加させ,稈長の年次変動の要因となった可能性が高い。

成果の活用面・留意点

  • コシヒカリ等の倒伏を予防するための肥培管理技術の基礎的知見として活用できる。
  • 穂首分化期頃の葉面積指数や葉色値の情報は,稈長の伸長程度や倒伏予測の参考となるので,大区画圃場の局所栽培管理に活用できる。
  • 当場の作況試験田(細粒強グライ土)における稚苗栽培(栽植密度18.5~22.2株,植え付け本数5本/株,移植日5月14日~16日)による。なお,葉面積指数とSPAD値は,補葉齢に対応させて内挿した値である。

具体的データ

表1.窒素施肥量と施肥時期.

 

図1.異なる発育段階における葉面積指数(左図)やSPAD値(右図)と成熟期の稈長との相関係数の推移

 

図2.穂首分化期頃(補葉例3.0)の葉面席指数と成熟期の稈長との関係

 

表2.移植後の気象環境と補首分化期頃(補葉齢3.0)の葉面積指数との相関係数

 

図3.起算日を異にして求めた積算降水量と穂首分化期頃(補葉齢3.0)における葉面積指数との間の相関係数の推移積算降水量は、起算日~5/5までの降水量の積算値.

その他

  • 研究課題名:生育情報収集処理技術を活用した低投入型高品質稲作営農システムの確立
  • 予算区分:実用化促進(地域総合)
  • 研究期間:平成12年度(平成10~14年)
  • 発表論文等:水稲稈長の年次変動とそれに関与する要因,日作紀(投稿中)