イネいもち病菌の準有性的組換えは, 有性生殖と同様に変異菌を発生させる

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要約

病原性の異なるイネいもち病菌の菌糸融合によって生じた準有性的組換え菌と交配によって生じた有性的組換え菌からは, イネ系統K59-1および品種「八反3号」に対して同様に病原性変異菌が得られる。

  • 担当:北陸農業試験場・水田利用部・病害研究室
  • 連絡先:0255-26-3242
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

環境に優しいイネいもち病の防除法として同質遺伝子系統の混合栽培が注目されているが, いもち病菌の病原性変異によるスーパーレースの出現によって発病抑制効果が崩壊する可能性がある。いもち病菌の病原性変異要因には, 交配(有性的組み換え), 菌糸融合(準有性的組み換え)および突然変異が考えられる。菌糸融合は, 複数のレースの病原性を併せ持つレースを出現させることが報告されているが, 病原性の遺伝様式は未解明である。そこで, 準有性的組み換えと有性的組み換えにより出現した菌株の病原性について, その遺伝的特性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • イネ系統K59-1に病原性を有し, 品種「八反3号」に非病原性の菌株(ビアラフォス耐性菌)とイネ系統K59-1に非病原性で品種「八反3 号」に病原性を有する菌株(ブラストサイジンS耐性菌)を親菌株として, 混合培養によって菌糸融合を誘発し, 両薬剤の耐性遺伝子を併せ持つ菌株を準有性的組換え菌として選抜する。また, 親菌株を対峙培養により交配し, 両薬剤に耐性を示す子のう胞子を分離選抜し, 有性的組み換え菌とする(図1)。
  • 準有性的組換え菌と有性的組換え菌のイネ系統K59-1に対する病原性の分離は類似である(表1)。
  • 準有性的組換え菌と有性的組換え菌の品種「八反3号」に対する病原性の分離は類似である(表2)。
  • 以上の結果から, イネいもち病菌の準有性的組換えは, 有性生殖による組換えと同様に病原性変異菌を発生させる。

成果の活用面・留意点

  • 病原性変異菌生成機構の解明およびスーパーレース増殖抑制技術の開発に活用できる。
  • 準有性的組換えと有性的組換えの生成機構が同様であるかは不明である。

具体的データ

図1.準有性的組換え菌および有性的組換え菌の作出方法

表1.準有性的組換え菌と有性的組換え菌のイネ系統K59-1に対する病原性の分離の比較

表2.準有性的組換え菌と有性的組換え菌の品種「八反3号」に対する病原性の分離の比較

その他

  • 研究課題名:混植圃における病原性変異菌の動態と増殖支配要因の解明
  • 予算区分 :次世代稲作
  • 研究期間 :平成12年度(平成10~12年)
  • 発表論文等:
    イネいもち病菌の菌糸融合による病原性の分離.日本植物病理学会報,66:108.2000.(講要).
    Genetic analysis of pathogenicity and mating type of parasexual recombinants of Magnaporthe grisea.Phytopathology,90:S77-78,2000.