野菜由来の新規ディフェンシン遺伝子を導入したいもち病抵抗性組換えイネ系統
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要約
アブラナ科野菜であるコマツナとキャベツから単離した新規ディフェンシン遺伝子およびそれらの改変遺伝子を良食味イネ品種「どんとこい」に導入した組換え体は、強いいもち病抵抗性を示し、抵抗性は後代に遺伝する。
- 担当:北陸農業試験場・地域基盤研究部・上席研究官・(稲遺伝解析研究室)
- 連絡先:0255-23-8302
- 部会名:生物工学、作物生産
- 専門:バイテク
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
いもち病、紋枯病などの重要病害に高度抵抗性を示す組換えイネ品種を開発するには、入手可能な既存の遺伝子の導入による対応だけでは不十分であり、抗菌作用を発現する新規の遺伝子を単離する必要がある。生物種に広く存在する抗菌タンパク質ディフェンシン遺伝子のうち、ダイコンから単離した遺伝子は、バクテリアおよびイネの重要病害であるいもち病菌に対して増殖抑制効果があることがすでに知られている。そこで、いもち病抵抗性付与に有効な遺伝子の取得を目的に、コマツナとキャベツから新規に単離した抗菌遺伝子ディフェンシンおよびその改変遺伝子をイネに導入することにより、いもち病抵抗性組換えイネ系統の作出を行う。
成果の内容・特徴
- コマツナおよびキャベツから新規に単離したディフェンシン遺伝子がコードするタンパク質は、ダイコンの当該遺伝子と比較してそれぞれ2残基、3残基ずつ構成アミノ酸が異なる。
- 上記のディフェンシン遺伝子2種類およびそれらのアミノ酸を1残基変更して改変した遺伝子2種類を、アグロバクテリウム法で良食味イネ品種「どんとこい」に導入した再分化個体からは、強いいもち病抵抗性の個体が高率で得られる(表1,図1)。
- 選抜した組換え体の稔性調査では80%以上の個体で非組換え体とほぼ同等の稔性を示し、後代検定のための採種が可能である(表2)。
- 選抜した組換え体の自殖第1世代(T1)の種子における分離比の調査を行った結果、細胞当たり1コピーの遺伝子導入個体が約84%得られ、また細胞当たり2コピーの遺伝子導入個体が約10%得られた(表3)。
- T1における導入遺伝子の発現量は、同一個体(T0)から採種した導入遺伝子ホモ、ヘテロ個体を含む組換え体間では差異が認められない。またいもち病抵抗性は自殖後代に遺伝する。
成果の活用面・留意点
- 供試した4種類の抗菌遺伝子がいもち病抵抗性の付与に効果があることから、新規病害抵抗性遺伝子としてイネ組換え体の実用化に利用できる。
- T2世代以降の導入遺伝子の安定性は今後調査を行う予定であり、利用の際には留意する必要がある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:耐病性関連defensin・RIP・レセプターカイネース遺伝子の単離とイネ組換え体作出
- 予算区分 :組換え・クローン
- 研究期間 :平成12年度(平成11~13年)
- 発表論文等:アブラナ科野菜から単離した新規ディフェンシン遺伝子の導入による高度病害抵抗