カバークロップによる休耕田の雑草・土壌管理とその跡地における水稲の収量

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要約

休耕田へのヘアリーベッチ、イタリアンライグラスーエンサイ(立毛播種)体系による周年カバークロップの導入によって、雑草の発生量を著しく抑制できる。また、カバークロップを鋤込んだ跡地での水稲収量は、水稲連作田より優る。

  • 担当:農業研究センター・耕地利用部・作付体系研究室(中央農業総合研究センター・耕地環境部・作付体系研究室)
  • 連絡先:0298-38-8532
  • 部会名:作物生産
  • 専門: 栽培
  • 分類:研究

背景・ねらい

米の生産調整の増大等に伴い、今後、中山間地域等の条件不利地を中心に、遊休水田や耕作放棄水田が増加することが憂慮されており、それへの対応が求 められている。また、水田には多面的な機能が期待されており、その維持・保全を図っていくことが重要である。そこで、休耕田を対象として、雑草管理および 生産力の維持・向上のための管理法を探る。

成果の内容・特徴

  • ヘアリーベッチまたはイタリアンライグラスの立毛中に夏作のエンサイを散播する周年カバークロップの導入によって、雑草の発生を抑制できる。その効果は、 グルホシネート液剤2回散布(1回目:6月中旬、2回目:8月中旬散布)と同等かそれ以上で、カバークロップの繁茂量が大きい場合はほぼ完全に雑草の発生 を抑制できる(表1、表2、表3)。
  • ヘアリーベッチー休閑およびヘアリーベッチーセスバニア体系も雑草の発生量は少ないが、前者は秋季に小型の広葉雑草やカヤツリグサ科雑草が多くなり、後者では、セスバニアは生育が進むにしたがって茎の基部が木化し、その後の刈り取りが困難になる(表2、表3)。
  • 休閑-エンサイ体系は、エンサイの初期生育が緩慢であるため、雑草発生の抑制力は小さい(表3)。
  • カバークロップとして冬作にヘアリベッチまたはイタリアンライグラス、夏作にエンサイを導入し、これらを翌春に鋤込んだ跡地における水稲は、水稲連作田の水稲に比べて増収する(表4)。
  • ヘアリーベッチ、イタリアンライグラス、エンサイの圃場への窒素還元量は、それぞれ1.8~2.4、0.24~0.3、0.4~0.6Nkg/aである。

成果の活用面・留意点

  • 1~2年間程度の短期休耕の水田管理法として活用できる。
  • ヘアリーベッチ、イタリアンライグラス立毛中へのエンサイの散播は、ヘアリーベッチでは生育の衰退が始まるころ、イタリアンライグラスは1番草刈り倒した 後の2番草が出穂・開花する6月中下旬が適当である。また、エンサイの茎葉がヘアリーベッチの植被上に抽出した後に湛水する。
  • エンサイは散播した種子が地表面に接していないと苗立率が著しく低下する。また、エンサイ芽生時期にナメクジの食害が多い。

具体的データ

表1 冬作のカバークロップ

表2 周年カバークロップの導入が雑草発生量に及ぼす影響(10月下旬調査)

表3 カバークロップの導入が雑草の発生量に及ぼす影響(1999年)

その他

  • 研究課題名:水田の機能維持・増強のための作付体系技術の開発
  • 予算区分 :「転作作物」、経常
  • 研究期間 :平成12年度(平成11~13年)