登熟温度が変動しても種子のアミロース量が変動しないイネ系統の選抜方法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

登熟温度の変化に対応しアミロース量や胚乳の透明度が変化する現象を指標として、登熟温度に係わらずアミロース量が一定である登熟温度非応答性変異体の選抜が可能となる。この方法を利用し、その変異体候補(coi)を選抜した。

  • 担当:農業研究センター・作物生理品質部・作物品質評価研究室(作物研究所・稲研究部・米品質制御研究室)
  • 連絡先: 0298-38-8951
  • 部会名: 作物生産
  • 専門: 食品品質
  • 対象: 稲 類
  • 分類: 研 究

背景・ねらい

米の食味の改善は最も重要な課題の一つである。米の食味・品質には多くの形質が関与していると考えられているが、そのうちアミロースはタンパク質と ともに食味に最も影響を与える物質である。アミロース量は登熟温度に左右され増減し(登熟温度が高いと減少し、登熟温度が低いと増大)、この変動が品質の 年次間変動の一因となっている。従って、温度変化が生じてもアミロース量の変動が生じない変異系統の作出を行うことは、米の品質の安定ならびに流通上、極 めて有用であると考えられる。

成果の内容・特徴

  • 低アミロース系統・76-3/T65では、低温で登熟した場合にアミロース量は増大し(図1)、胚乳は透明となる(図2)。また、高温で登熟した場合にはアミロース量は低下し(図1)、胚乳は白濁する(図2)。このように登熟温度の変化に対応し、アミロース量や胚乳の透明度は変化する。
  • この胚乳の透明度の変化を指標にして、つまり低温で登熟しても胚乳が透明にならない系統を選ぶことで(図2)、アミロース量に関して登熟温度非応答性である系統を数多くのイネから簡単に選抜することが可能となる(図1)。
  • 76-3/T65を変異原処理し、温度非応答性変異系統候補・coiを選抜した。21°Cおよび28°Cで登熟させたcoiでは、登熟温度が変化しても76-3/T65よりもアミロース量の変化が少なく、登熟温度に非応答性である (図1)。
  • 76-3/T65型とcoi型の種子を共に含む株(ヘテロ株)の種子より生育した株に実った胚乳の解析から、登熟温度非応答性は劣性の1遺伝子支配であることが明らかになった(表1)。

成果の内容・特徴

  • coiの特性は、低アミロース系統76-3/T65に特異的である可能性や、別の低アミロース遺伝子に起因する可能性があるので、今後の特性解明が必要である。
  • coiは、食味や品質の変動が少ないイネを作出するための母本として利用できる可能性がある。

具体的データ

図1:登熟温度とアミロース量の関係
図1:登熟温度とアミロース量の関係

 

図2:登熟温度と胚乳の透明度の関係
図2:登熟温度と胚乳の透明度の関係

 

表1:登熟温度非応答性ヘテロ型株後代の分離様式*
表1:登熟温度非応答性ヘテロ型株後代の分離様式*

 

その他

  • 研究課題名:米の食味関連形質の特性解明と改善策の確立
  • 予算区分 :経常、重点基礎(=平成11年度)
  • 研究期間 :平成12年度(平9~12年度)