矮化剤を利用してイネばか苗病罹病苗の判別を容易に行う方法

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要約

矮化剤をイネに処理すると,無病苗の草丈は抑制されるが,イネばか苗病罹病苗は徒長する。イネが徒長する日照不足等の条件下でも罹病苗を容易に区別できることから,温室で周年を通して本病の検定が可能になる。

  • 担当:農業研究センター・病害虫防除部・水田病害研究室(中央農業総合研究センター・病害防除部・糸状菌病害研究室)
  • 連絡先: 0298-38-8940
  • 部会名: 生産環境
  • 専門: 作物病害
  • 対象: 稲類
  • 分類: 研究

背景・ねらい

イネばか苗病は種子伝染性の病害であり,種子消毒が最も有効な防除手段である。近年,環境保全型農業推進のため,化学合成農薬に替わる種子消毒のた めの様々な資材・手法が検討されている。防除効果の判定は,発病苗率を調査することにより行われている。しかし本病は典型的な症状を除き,罹病苗と無病苗 との区別に困難をきたすことが多い。そこで罹病苗と無病苗を容易に判別する方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本法では水稲育苗期の徒長防止に登録のあるウニコナゾールP液剤を用いる。本剤の処理により無病苗の徒長は抑制されるが,罹病苗は徒長するので,草丈により両者の区別が容易になる(図1)。矮化剤を処理しないとは罹病苗の判別は困難である(図2)。
  • 育苗に10cm×15cm×3cmの大きさの容器を用い,床土はクミアイ粒状培土250g,播種量を15gとした場合,最も効果的なウニコナゾールP液剤施用法は,播種して28℃で2日間出芽後,本剤2gを適量の水道水(約50~100ml)で希釈して土壌に灌注する。
  • 本病の調査基準では無病苗の約1.5倍に徒長した苗を罹病苗とする。イネを播種し,上記の方法で矮化剤を処理すると,処理約3~4週間後の無病種子区の草 丈に対して,罹病種子区(播種前に調査した保菌籾率は90%以上)ではその1.5倍以上に徒長した苗が多く,草丈から容易に罹病苗が判定できる(図1,表1)。
  • 矮化剤処理により無病苗は茎が太く,葉色が濃く,節間の短い,葉身の広い苗となる。このため罹病苗の病徴との差がより強調され、草丈に加えて総合的な発病の判定がさらに容易となる。

成果の活用面・留意点

  • 本法を利用する際には必ず無病種子区あるいは種子消毒区を対照に設ける。
  • ウニコナゾールP液剤以外の矮化剤については検討していない。

具体的データ

 

図1:矮化剤を処理したばか苗病罹病苗の生育状況(播種21日後)
図1:矮化剤を処理したばか苗病罹病苗の生育状況(播種21日後)

 

図2:矮化剤を処理しない場合の苗の生育状況(播種28日後)
図2:矮化剤を処理しない場合の苗の生育状況(播種28日後)

 

表1:矮化剤処理区のイネの生育状況(播種26日後)
表1:矮化剤処理区のイネの生育状況(播種26日後)

 

その他

  • 研究課題名:無病化種子,機能水消毒を核とした主要病害の総合防除技術の確立
  • 予算区分:持続的農業・IPM
  • 研究期間:平成12年度(平成11年~13年度)