ゴボウを指標としてキタネグサレセンチュウ密度とニンジンの線虫被害が推定できる

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要約

キタネグサレセンチュウに加害されたゴボウの主根上には壊死斑ができ、その発生数は土壌中の線虫密度と相関する。この壊死斑を利用すると、キタネグサレセンチュウ密度と次作のニンジンの線虫被害が推定できる。

  • 担当:農業研究センター・病害虫防除部・線虫害研究室(中央農業総合研究センター・虫害防除部・線虫害研究室)
  • 連絡先: 0298-38-8839
  • 部会名: 生産環境,総合研究
  • 専門: 作物虫害
  • 対象: 根菜類
  • 分類: 指導

背景・ねらい

キタネグサレセンチュウは多くの作物を加害し、特に根菜類での被害が大きい。そこで、農家などの現場で使用できる、本線虫の密度簡易判定法を開発する。また、生物検診によるニンジンの被害予測の可能性を検証する。

成果の内容・特徴

  • ゴボウの根にキタネグサレセンチュウが侵入すると褐色の壊死斑を生じる(図1)。 キタネグサレセンチュウを接種・定着させたポットで5月中旬から3週間栽培したゴボウ(品種:滝野川、てがる、柳川理想、渡辺早生)の主根1cmあたりの 壊死斑数は、土壌中の線虫密度と有意な回帰がみられ、ゴボウ3週間苗による生物検診で土壌中の線虫密度推定が可能であった(図2、表1)。
  • ゴボウ栽培後のポットで7月下旬より18週間栽培したニンジン(品種:向陽2号)の表皮に、ネグサレセンチュウ加害による長さ1~3mmの傷が認められ た。この傷のニンジンにおける発症程度(0:被害無し、1:傷が10個未満で目立たない、2:傷が目立ち小さな裂開を伴うものもみられる、3:多い、4: 傷が全面に分布)から計算した被害度指数[Σ(発症程度別株数×発症程度)/(調査株数×4)×100](y)は、ニンジン播種時の線虫密度(x)との間 にy=55.8・log(x+1)+6.42、r^2=0.83、P&st;0.001の関係がみられた。
  • 上記2.のニンジンの被害症状は、前作のゴボウ壊死斑と相関がみられた。ゴボウに壊死斑が確認された場合は、ニンジンに被害症状が現れることが予想される。特にゴボウ壊死斑が1cmあたり3~5個を超えると、ほとんどのニンジンは線虫被害のために出荷できなくなる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • ゴボウを用いた検診は、ミナミネグサレセンチュウ発生圃場では利用できないが、ミナミネグサレセンチュウの分布がサトイモ圃場などの一部に限られている本 州において広く利用できる。九州においてもダイコン栽培地など、圃場の優占種がキタネグサレセンチュウである場合には利用可能である。
  • 本モデルは平均気温23℃条件下のものである。早春に検定する場合は、ハウス内のポットなどで栽培する必要がある。

具体的データ

 

図1:ゴボウ3週間苗主根上のキタネグサレセンチュウ壊死斑(品種は滝野川)
図1:ゴボウ3週間苗主根上のキタネグサレセンチュウ壊死斑(品種は滝野川)

 

図2:ゴボウ主根の壊死斑数と播種時線虫密度との関係(播種時線虫密度はベルマン法による土壌20gあたり線虫数。破線は回帰直線の95%信頼区間。ゴボウの品種は渡辺早生、回帰式は、log(y+1)=0.159x+0.09、r^2=0.638、P&st;0.001、n=45。)
図2:ゴボウ主根の壊死斑数と播種時線虫密度との関係(播種時線虫密度はベルマン法による土壌20gあたり線虫数。破線は回帰直線の95%信頼区間。ゴボウの品種は渡辺早生、回帰式は、log(y+1)=0.159x+0.09、r^2=0.638、P&st;0.001、n=45。)

 

図3:ゴボウ壊死斑と次作ニンジンのキタネグサレセンチュウ被害の関係(相関係数r=0.794、n=45、P&st;0.001。ゴボウの品種は渡辺早生、y=20の直線はニンジンの被害症状が目立つ閾値。)
図3:ゴボウ壊死斑と次作ニンジンのキタネグサレセンチュウ被害の関係(相関係数r=0.794、n=45、P&st;0.001。ゴボウの品種は渡辺早生、y=20の直線はニンジンの被害症状が目立つ閾値。)

 

表1:ゴボウ主根1cmあたり壊死斑数によるキタネグサレセンチュウ密度の推定式
表1:ゴボウ主根1cmあたり壊死斑数によるキタネグサレセンチュウ密度の推定式

 

その他

  • 研究課題名:露地野菜の減農薬のための土壌線虫の総合防除技術の開発
  • 予算区分:地域総合
  • 研究期間:平成12年度(平成9~12年度)