キタネグサレセンチュウの寄主親和性には種内変異がある
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要約
11種の検定作物におけるキタネグサレセンチュウの18個体群の増殖程度は各検定作物で異なっていることから、その寄主親和性には明らかに種内変異が存在する。寄主親和性が類似する個体群は必ずしも地理的に接近していない。
- 担当:農業研究センター・病害虫防除部・線虫害研究室(中央農業総合研究センター・虫害防除部・線虫害研究室)
- 連絡先: 0298-38-8839
- 部会名: 生産環境
- 専門: 作物虫害
- 対象: 根菜類
- 分類: 研究
背景・ねらい
キタネグサレセンチュウはダイコン、ゴボウ、ニンジン等根菜類の減収、奇形、商品価値の低下(根菜表皮部病斑形成等)の原因線虫である。国内では本
種の寄主レースは報告されていないが、国外ではこの線虫に少なくとも3つの寄主レースが知られている。そこで、検定作物への接種試験により、国産種の寄主
選好性の個体群間構造を解析する。
成果の内容・特徴
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任意に選定した11種の作物(表1)に全国から収集したキタネグサレセンチュウ17系統及び北米の1系統を2.5頭/土1gの密度で接種し、25℃で60日間栽培すると、各供試個体群はイチゴを除くすべての検定作物根圏土壌から有意に異なった密度で分離される(表2)。分離密度は概ねマメ類、キュウリ、ダイコンで高く、イチゴ、カンショ、トウガラシ、オクラでは低い。作物根圏土壌からの線虫分理密度は線虫の寄主親和性を反映している。
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各検定作物に対する寄主親和性には個体群間差が認められ、本種の好寄主とされるダイコンに親和性が低い個体群、逆に本種の不適寄主とされるカンショに対して他個体群より有意に高い親和性を示す個体群等が存在する(表2)。
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分離密度の相関行列を用いた主成分分析では寄主親和性の相違の大部分を単独で説明できる主成分は認められない。第1主成分の寄与率は27%、第2主成分の
寄与率は19%に過ぎない。第1主成分の係数は、マメ類を除いてすべて正であることから主に平均的な増殖力を表す因子と考えられる。
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第1・第2主成分の得点プロットは、キタネグサレセンチュウの国内個体群間に増殖力や特定寄主に対する親和性の隔たりがあることを示している(図1)。
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クラスター分析から得られた個体群間の寄主親和性の距離とそれらの地理的な距離は一致していない(図2)。
成果の活用面・留意点
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キタネグサレセンチュウの耕種的防除法を策定する際の参考となる。
- 寄主作物を限定したレース策定の参考となる。
具体的データ

表1:供試検定作物と品種

表2:接種60日後の土壌20g当たりの分離線虫数(6反復平均値)

図1:キタネグサレセンチュウ18個体群の主成分得点プロット

図2:寄主親和性のクラスター分析樹形図(ユークリッド距離の最短距離法)
その他
- 研究課題名:キタネグサレセンチュウの寄生性変異個体群の分布様式の解明
- 予算区分:経常・重点基礎
- 研究期間:平成12年度