殺虫剤等の鳥用忌避剤としての有効性
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要約
市販の殺虫剤・殺菌剤など6種の薬剤と既存の鳥類用忌避剤であるチウラムのキジバト、スズメ、ムクドリに対する忌避効果を飼育下で検定したところ、フェニトロチオンがチウラムに匹敵する高い効果を有していた。
- 担当:農業研究センター・病害虫防除部・鳥害研究室(中央農業総合研究センター・耕地環境部・鳥獣害研究室)
- 連絡先: 0298-38-8825
- 部会名: 生産環境
- 専門: 作物虫害
- 対象: 野生動物
- 分類: 研究
背景・ねらい
農業従事者の減少や圃場面積の拡大にともなって、低コストで省力的な防除手段として鳥用忌避剤への期待は大きい。しかし、現在鳥用忌避剤は数種類し
かなく、その効果も限定的である。早期に実用的な忌避剤を開発・登録するため、すでに殺虫剤等として登録されている農薬から鳥に対して有効なものを探索する。
成果の内容・特徴
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市販の農薬5種類と、米国で使われているアントラニル酸メチル及び対照薬剤として鳥用忌避剤のチウラムを試験対象とした(表1)。被験対象として穀物食性のキジバト及びスズメ、果実食性のムクドリを個体別に飼育し、餌に農薬を処理して実験した。
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十分量の無処理餌と薬剤処理餌を同時に与える二皿選択実験を、薄い薬剤濃度から4倍ずつ濃くすることによって感知濃度を判定したところ、イミダクロプリドとイミノクタジン酢酸塩をのぞいて散布用濃度に近い低濃度で感知された(表2)。
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感知された濃度で薬剤処理した餌のみを与えて摂食阻害効果を評価したところ、鳥用忌避剤として広く使われているチウラムは効果がそれほど高くないのに対し、フェニトロチオンは安定した阻害効果を示した(表3)。
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以上の結果、フェニトロチオンは、試験したいずれの鳥にも低濃度で感知され、かつ摂食阻害効果にも優れ、少なくとも既存忌避剤のチウラムに匹敵する有効性を有していた。他の薬剤は摂食阻害効果や毒性に問題があり、鳥用忌避剤としての有効性は低かった。
成果の活用面・留意点
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現時点ではチウラム以外の薬剤は鳥用忌避剤としては登録されていないので、試験研究目的以外で用いてはならない。
- 今回の試験は飼育下のものであり、今後フェニトロチオンが鳥用忌避剤として登録されるためには、作物(直播稲籾や大豆)ごとに薬害等に考慮した処理方法を確立して圃場で効果を確認する必要がある。
- すべての実験において薬剤による死亡個体はなかった。もっとも有望であったフェニトロチオンについて、処理餌のみを与えたときの日・体重当たりの有効成分
摂取量は4~42mg/kgで、ラットの経口急性毒性値(LD50 =♂330mg/kg,♀800mg/kg)より低かった。
具体的データ

表1:試験対象薬剤

表2:感知濃度(忌避され始める濃度)の評価

表3:摂食阻害効果(空腹時でも食害を防ぐ効果)の評価
その他
- 研究課題名:殺虫剤等の鳥類に対する忌避効果の検証
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成12年度(平成11~13年)