粘着剤すじ塗工シートを用いた水稲育苗法

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要約

粘着剤をすじ状に塗工したシートを用いて、水稲種子を田植機の横掻き取りピッチに合わせて苗箱へ播種する簡易な方法で、掻き取り本数のバラツキが減少し、必要苗箱数を低減できる。

  • 担当:農業研究センター・機械作業部・水田作機械化研究室(中央農業総合研究センター・作業技術研究部)
  • 連絡先: 0298-38-8812
  • 部会名: 作業技術
  • 専門: 作業
  • 対象: 水稲
  • 分類: 研究

背景・ねらい

稚苗移植栽培においては、10a当たり約20箱の苗箱を必要とする。重労働である苗運搬は、補助作業者の女性が行う場合が多く、高齢化が進むなかで は苗箱数の低減や軽量化が緊急の課題となっている。必要箱数の低減のためには、小ピッチで精度良く苗の掻き取りが行える、苗箱への高精度な播種法の開発が 求められる。本研究では、比較的小規模農家向けの簡易な高精度播種・育苗技術の開発を行う。

成果の内容・特徴

  • 開発した粘着剤すじ塗工シートは、田植機の横掻き取りピッチに合わせてアクリル系水溶性粘着剤をすじ状に塗工した縦58cm、横28cmの水溶紙である。使用前の粘着剤塗工面は剥離紙によって保護されている。水溶紙は中性で、苗の生育に影響しない。
  • 本方法の播種作業では、まず剥離紙をはがしたシート面に種子をばらまき、軽くスポンジなどで押さえて粘着剤塗工部分に種子を固定する。次に、シートの片側を持ち上げて余分な種子を落とし、床土を充填し潅水した苗箱に載せて覆土する(図1)。
  • 播種量は、粘着剤塗工幅によって決まる。粘着剤のすじ列が26本の場合、140g(乾籾換算)の播種量を得るためには、玄米では3mm、籾では4mmである(図2)。
  • 本方法では、既存の播種プラントを用いて散播する慣行に比べ、田植機による掻き取り本数のバラツキが減少する。特に玄米を用いた場合、縦送り10mmで掻き取っても欠株率を2%以下に抑えることができる(図3、図4)。縦送り10mmの設定では、株間17cmで10a当たり20箱必要としている苗箱を、13箱に低減できる。

成果の活用面・留意点

  • 種子は、表面をある程度乾かしてからシートに搭載する。
  • 玄米を用いる場合はリゾープス等糸状菌による苗立枯病が発生しやすく、カビの発生防止、育苗管理法は今後の検討課題とする。

具体的データ

図1:種子搭載の様子
図1:種子搭載の様子

 

図2:粘着剤塗工幅と種子搭載量
図2:粘着剤塗工幅と種子搭載量

 

図3:掻き取り本数の分布(縦送り10mm)
図3:掻き取り本数の分布(縦送り10mm)

 

図4:欠株率および掻き取り本数のバラツキ
図4:欠株率および掻き取り本数のバラツキ

 

その他

  • 研究課題名:水稲移植用苗箱低減化のための精密条播・育苗技術の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成12年度(平成11~13年)