農業労働力の推計に基づく農地利用の予測手法

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要約

加齢に伴う経営主および世帯員の農業労働力の変化を確率的に推計し、農業労働力と農業経営規模の関係から逐次的に農地利用の変化を予測する予測手法を開発した。

  • 担当:農業研究センター・農業計画部・農業組織研究室(農業工学研究所・農村計画部・総合評価研究室)
  • 連絡先: 0298-38-7666
  • 部会名: 経営,総合研究
  • 専門: 農村計画
  • 分類: 研究

背景・ねらい

農業労働力の確保が極めて困難な状況にある地域では,農外への転用を視野にいれた土地利用の再編が重要な課題となっている。そこでは土地条件に基づ く優良農地の把握と実際の農業労働力に基づくそれら農地の利用可能性に関する判断が重要である。そこで将来の農業労働力の推計に基づいて農地利用の変化を 予測する手法を検討する。

成果の内容・特徴

  • 図1に示される予測プログラムを作成した。その特徴は以下のように示される。

    ・このプログラムは,農業労働力の変化を推計する確率的処理,および農地利用を予測する逐次的処理から構成され,農家毎にt年間の予測を1,000回繰り返し行いその集計結果からt年後の予測値を導く。

    ・確率的処理では,モンテ・カルロ法を援用し,世帯員の死亡/リタイヤなど各現象の生起確率(パラメータ)と生成される一様乱数の値との比較から確率的に現象を生起させる処理を各現象毎に行う。また逐次的処理では,図2に示すフローに基づいて労働力区分を判断し,労働力区分別経営耕地面積(表1)の値を用いて農家毎に経営耕地面積等を求める。

    ・予測には,農家世帯員の年齢,農作業従事日数,農外への就業状況,農地の利用意向(自作する/貸し付ける/放棄する)等を収録する「データセット」,各 現象の生起確率である「パラメータ」,および「労働力区分別経営耕地面積」の値を用いる。これらのデータは現地調査および統計データから収集・設定を行な う。

  • この予測プログラムを棚田が立地するH集落に適用したところ,当該集落では5年後に経営耕地面積が24.7haから16.1haへと大幅に減少するという予測結果を得た。この予測値は2000年センサスの値に近似しており,精度の高い予測結果を得られることが確認された。
  • 「労働力区分1」および「労働力区分2」の農家へ農地の集積が進むものと仮定し,労働力区分別経営耕地面積を上方にシフトさせた予測を行ったところ,基本 予測に比べて借入面積が増加し,経営耕地面積の減少が少なくなるという予測結果を得た。このように本予測手法を用いることによって,仮定されるシナリオに 沿って予測を行うことができる。

成果の活用面・留意点

本手法は個別経営が中心である集落を対象に適用可能である。予測に用いるデータは,現地調査,および統計データから収集する必要があるが,各種パラメータ,および農業労働力と経営耕地面積との関係については,対象地域の条件に即して再設定する必要がある。

具体的データ

図1:予測のアルゴリズム
図1:予測のアルゴリズム

 

図2:労働力区分を判断するフローチャート
図2:労働力区分を判断するフローチャート

 

表1:労働力区分別経営耕地面積-H集落の場合-
表1:労働力区分別経営耕地面積-H集落の場合-

図2:労働力区分を判断するフローチャート
図2:労働力区分を判断するフローチャート

その他

  • 研究課題名:条件不利地域における土地利用の再編方向
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成12年度(平成11~12年)