直売を付加した市民農園の可能性

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要約

市民農園の利用を希望する住民の関心を有向グラフ化すると、共通して新鮮な野菜への関心が高い。利用希望者の施設充実型、直売付加型および両者欠如型農園への選択をコンジョイント分析により試算すると、25%が「直売付加型」の市民農園を選択する。

  • 担当:農業研究センター・農業計画部・農村生活研究室(農業技術研究機構・総合企画調整部・研究調査室)
  • 連絡先: 0298-38-7852
  • 部会名: 経営,総合研究
  • 専門: 農村計画
  • 分類: 行政

背景・ねらい

市民農園の利用が先行する埼玉・神奈川の都市部では、約400人に1区画が整備されている(農林水産省統計)。しかし、近年、区画数の増加は減速傾 向にある。一方、農村的地域で区画数が増えているが、大都市部と同じタイプで十分利用されるか懸念されている。そこで、主に後者を対象に、住民の関心を踏 まえた新たなタイプの市民農園を提案する。
なお、区画数の多い自治体等の市民農園では、一部で施設整備の一環として直売施設が設置されているが、区画数の少ない農家が開設する農園では直売所の併設はみられない。

成果の内容・特徴

2000年3月、茨城県つくば市の住民500名(無作為抽出)を対象に、郵送調査を実施した(有効回答306名)。なお、「直売付加型」市民農園とは、農家からの農産物の購入を利用料金に組み込んだ農園や、一定額以上の購入を前提に利用を取り決める農園である。

  • 回答者の14%(42名)が、「市民農園を5年以内に利用したい」という関心を示した。1年当たりに換算すると、住民約200名に1区画の潜在需要を想定できる。
  • 農園利用希望者の関心の関連をみるため、クロス集計結果を有向グラフ化すると、希望者の共通的な関心事として、新鮮な野菜の入手を指摘できる(図1)。農園指導者への聞き取りでも、新鮮な野菜への関心は高いが、利用者は十分な野菜を入手できていない。
  • 利用希望者の新鮮な野菜への関心に基づき、希望者に直売(メニュー・セット・無し)、指導(年5回講習会・随時相談・無し)、施設(クラブハウス・東屋・ 無し)の有無と区画(30m2・50m2・無区画体験型)の大小を組み合わせた農園タイプを提示し、コンジョイント分析を行うと(回答40名)、直売の有無は 指導の有無と同程度の選好要因となる(図2)。指導は近年利用者からの希望が強い。直売の方式は、メニュー方式(リストから選択)とセット方式(農家が設定)では、メニュー方式が選好される(図3)。
  • 分析結果を用い、自治体等が開設する代表的タイプとしての施設充実型(クラブハウス)農園と、区画数の少ない農家開設タイプとして提案する「直売付加型」 (メニュー方式)、および現行農家開設の施設も直売も無い型の農園とに対する選好を試算すると、利用希望者の25%は「直売付加型」の市民農園を選択す る。利用者の潜在的な関心や需要に対応して市場が分割でき、「直売付加型」の市民農園の市場が成立しうる。

成果の活用面・留意点

  • 区画数の少ない農園の開設希望者や交流による農家の経済的メリットが課題の滞在型市民農園、直売所に、注文・斡旋(注文書を定期配布)によるメニュー方式を提案する。
  • 農産物の受け渡しには、配達コストを低減するため、近隣の直売所の媒介が望ましい。

具体的データ

図1:市民農園への期待(利用希望者42名の関心の選択関係、数値は選択数)

 

図2:市民農園を選択する基準(利用希望者40名の平均重要度)
図2:市民農園を選択する基準(利用希望者40名の平均重要度)

 

図3:市民農園に付加する直売方式の評価(利用希望者40名の平均効用)
図3:市民農園に付加する直売方式の評価(利用希望者40名の平均効用)

 

その他

  • 研究課題名:農家生活の将来像策定のための動向解析
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成12年度(平成8~12年)