子どもの農業体験への農業者の協力意向に影響する要因
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要約
子どもの農業体験への農業者の協力意向に影響する要因を、数量化II類によって明らかにした。主な要因は、協力することの「楽しさ」「誇り」「つきあいの広がり」といった農業者側の主体的なメリットの有無、協力経験の有無である。
- 担当:農業研究センター・農業計画部・農村生活研究室(農業工学研究所・農村計画部・集落計画研究室)
- 連絡先: 0298-38-7668
- 部会名: 経営,総合研究
- 専門: 経営
- 分類: 行政
背景・ねらい
近年、農業の教育的機能への期待が高まり、小学校での農業体験の取り組みが活発になっている。しかしながら指導者不足等の問題点が指摘されており、
今後、農業者側への協力要請が高まることが予想される。そこで、協力してくれる農業者を探索するために、農業者の協力意向に影響する要因を明らかにする。
成果の内容・特徴
1999年11月に長野県上田市において農業者を対象とする質問紙調査(配布数2,708、有効回答数1,568)を実施した。調査対象地である上
田市では全小学校で米作りを主とする農業体験の取り組みを行っており、子どもの農業体験について農業者が判断を下し得るという点で、農業体験の先行事例と
して位置付けられる。
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農業体験に協力意向をもつ農業者(協力意向を有する群)は57%、協力意向をもたい農業者(協力意向を有しない群)は43%である。
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数量化II類の適用により、8つの要因によって72%の判別的中率で「協力意向を有する群」と「協力意向を有しない群」に判別できる(表1)。
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協力意向に最も影響する要因は、「農業体験への協力で自分にも利点がある」と思うか否かである(表1)。
明確なメリットが見いだせないと協力意向が弱くなる方向に影響する。協力意向をもつ農業者のうち65%が「子どもと接して楽しい」、37%が「農業に対し
て誇りが持てる」、22%が「つきあいが広がる」としており、非経済的なメリットを重視している。今後、学校側のメリットと同時に農業者側のメリットへの
考慮が必要である。
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2番目に影響する要因は「農業体験に協力した経験」の有無である。協力した経験ある農業者には協力意向が強い。農業者の協力意向を促進するために、未経験
者が協力を試行する機会を設定する方策が求められる。その際、協力しやすい条件として、「協力内容が農作業の手伝い程度であること」「小学生が対象である
こと」「地域内の学校であること」、が参考となる(図1)。
成果の活用面・留意点
普及センター、自治体、学校、JA等が、子どもの農業体験への協力農業者を個人的なつてではなく広く募集・探索する際に、農業者側の動機付けや条件の設定を行う上で有用である。
具体的データ

表1:協力意向の有無を判別する要因(数量化II類の分析)

図1:協力意向をもつ農業者の協力の条件(複数回答、単位:%)
その他
- 研究課題名:子どもの農業体験への取り組み方法の解明
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成12年度(平成12~14年)