知識と経験を共有する農業事例ベースの基本構成
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要約
農業事例ベースの基本構成を提案した。事例ベースは一般に共有可能な農業事例を共有するための事例検索システム、専門家の知識を共有するための専門家検索システム、現場の事例を共有するメーリングリストシステムとからなる.
- 担当:農業研究センター・研究情報部・情報解析研究室(中央農業総合研究センター・農業情報研究部・営農情報システム研究室)
- 連絡先: 0298-38-7176
- 部会名: 情報研究
- 専門: 情報処理
- 分類: 普及
背景・ねらい
農業は、気象など制御や予測が困難な要素を含み、それらが複雑に作用しているため、その全体の系を数理モデルを用いて的確に記述することが難しい。
そこで過去の成功事例や失敗事例を再利用して新たな問題解決を図ることは極めて有効であると考えられる。こうした営農に関わる経験や知識を記述したものを
農業事例と呼び、これを共有して再利用するシステムが農業事例ベースである。ここではどのような事例ベースを構築すべきかを明らかにするために、農業分野
にふさわしい事例ベースの基本構成を提案する。
成果の内容・特徴
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事例ベースで扱う知識や経験である農業事例はその形態から2種類に分けられる。ひとつは文書化された事例であり、これはコンピュータで扱うことができる。もうひとつは文書化されていない農業の知識や経験である。これは専門家や農業者といったひとが記憶として持っている。
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農業事例ベースの基本構成は事例検索システム、専門家検索システム、メーリングリストシステムの3つの要素からなる(図1)。事例検索システムとメーリングリストシステムは文書化された農業事例を、専門家検索システムは記憶の農業事例を扱う。
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事例検索システムは農林水産現地情報など一般に公開された農業事例を共有するシステムである。検索には概念検索手法を用いて、効率的な事例検索を可能である(図2)。
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専門家検索システムは問い合わせに対して関連のある専門家を検索結果として提供するシステムである。それぞれの専門家は公開された論文や著書などのリストへリンクが張られている(図3)。利用者が専門家へ相談することにより文書化されていない知識や経験を利用可能となる。
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メーリングリスト(ML)システムは一般農業事例や専門的な知識だけでは扱えない現場の事例を共有する。これはMLサーバに全文検索サーバを付加したシステムである。農業者が参加して特定の作物を議論するMLグループで交換される情報を、グループ内部で再利用できる。
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一般的な事例で関連事例が見つからない場合は関連する専門家を探してたり、同じような現場事例がないか探したりしながら、タイプの異なる事例が一体となって農業事例ベースの問題解決能力を高めることができる。
成果の活用面・留意点
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本成果は事例ベースの設計図の役割を提供し、ホームページを開設している普及センター、JAなどが事例ベースを構築するときに活用される。
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専門家検索システムは普及員等の営農指導専門家への応用が可能である。
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本システムのうち、事例検索システムと専門家検索システムは次のアドレスで公開している。 http://agrinfo.narc.affrc.go.jp/
具体的データ

図1:農業事例ベースの概念図

図2:事例検索の例「カラス」という問い合わせの結果

その他
- 研究課題名:データマイニング手法を用いた農業情報の解析
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成12年度(平成9年~14年)