3次元コンピュータグラフィックス技術を応用した仮想稲(Virtual Rice)

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要約

稲の3次元形態およびその生長過程を3次元デジタイザを用いて計測し,形態形成のアルゴリズムと3次元コンピュータグラフィックスを統合した環境を利用して稲の3次元形態形成モデル(仮想稲,Virtual Rice)を作成した。

  • 担当:農業研究センター・研究情報部・モデル開発研究室(中央農業総合研究センター・農業情報研究部・モデリング研究室)
  • 連絡先: 0298-38-7177
  • 部会名: 情報
  • 専門: 情報処理
  • 対象: 稲類
  • 分類: 研究

背景・ねらい

作物の3次元形態は,草型による受光量の変化,病害虫被害量,薬剤散布効果評価などに重要な要素だが,実際の栽培実験は非常に労力がかかる。また現 在存在しない草型では実験が不可能である。そこでコンピュータ内に任意の水稲草型を作出できる「仮想稲」を作成し,多分野の研究者が効率良く思考実験,共 同研究を行うための基盤技術とする。

成果の内容・特徴

  • 音波を利用した3次元デジタイザ(Freepoint 3D, http://www.gtcocalcomp.com)を利用して,仮想稲作成に必要な形態データを収集し,水稲の基本成長,3次元構造を数式化した。データ収集ソフトウェアはオーストラリア連邦科学産業研究機構で作成され,無償で利用できる(http://www.cpai.uq.edu.au/index.html)。
  • 植物の成長規則を記述するアルゴリズム「Lシステム」とコンピュータグラフィックスを組み合わせたコンピュータ環境「仮想植物実験室」(カナダ,カルガリー大学開発,http://www.cpsc.ucalgary.ca/Research/bmv/vlab/index.html)上のプログラミング言語cpfgを用いて,水稲の生長規則及び形態情報を組み込んだ仮想稲モデルを記述した。モデルには出葉,節間伸長,出穂だけでなく分げつ過程を組み込んでいる。 仮想稲は,水稲の3次元形態及びその生長をコンピュータ画面上に再現できる。また生理的発育ステージの計算過程を組み込んでおり,地域や気温による幼穂形成,出穂,成熟時期の変化を表現できる。

成果の活用面・留意点

  • 形態を数字や言葉ではなく画像として提供できるため,異分野の研究者間の意志疎通がスムーズになる。
  • 研究成果を農家や消費者にわかりやすく紹介するツール,あるいは作物生長過程を解説する教育ツールとしても活用できる。
  • 水稲の3次元形態の実測値は少なく,データの蓄積が必要である。
  • 物質生産過程は組み込まれていないが,今後対応予定である。

具体的データ

図1:作成された仮想稲(左)と仮想水田イメージ(右)その他
図1:作成された仮想稲(左)と仮想水田イメージ(右) その他

 

その他

  • 研究課題名:生物モデル構築のための情報モニタリング手法の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成12年(平成9~13年)