ベルト状水稲一本苗の播種・育苗・移植技術

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要約

1粒の籾をベルト状に接着された小ブロックに播種し、プールで育苗したベルト一本苗を切取って移植する一連の技術を開発した。種子量・育苗面積の低減化、育苗の省力化、苗ハンドリング性の向上、移植期間の拡大が図れる。

  • 担当:農業研究センター・プロジェクト研究第3チーム(中央農研・関東東海総合研究部・総合研究第2チーム)
  • 連絡先: 0298-38-8822
  • 部会名: 総合研究,作業技術
  • 専門: 機械,作業
  • 対象: 稲類
  • 分類: 指導

背景・ねらい

水稲移植栽培における播種・育苗作業における労力・コストの低減、苗ハンドリングの改善ならびに移植作業の能率向上を図る。そこで、細長いベルト状 に連結したブロック培地に籾を播種して育苗し、完成した苗をブロックごと切り取って、一本ずつの苗として移植する技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 細長いフィルムに小さいブロック培地が連続的に接着されている育苗ベルトを用いる。ブロック培地はウレタン製で、種子が播かれる播種溝と、ベルト送りや植 付けに利用する送り・植付け穴がある。育苗ベルトは1本当たり1000粒播け、巻き取られてロール状になった場合、直径は28cmとなる。株間24cmで 移植する場合、移植距離は240mに相当する。
  • 「1粒播種機」は水稲の種子を1粒ずつ吸引して搬送し、ブロック培地の播種溝に播種し、ロール状に巻き取る機械である(図1)。播種精度は約97%である。約3%の未播種部には人力で播種する必要があるため、播種能率は1ロール当たり約15分かかる。
  • 播種機で播種後巻き取られたロールを水槽に浸種し、催芽し、出芽を確認した後育苗プールに移す。育苗は育苗プールの底に育苗培土(含肥料)を敷き、その上にロールを置いて育苗する(図1)。育苗期間は、稚苗で約2週間、中苗で約4週間である。育苗期間中に約4%の不良生育苗・未発芽種子が発生した(表1)。
  • 「ベルト苗田植機」は市販の田植機にロール状ベルト苗搭載部、苗誘導部を取り付けたものである(図1)。田植機の移植爪でブロック培地をフィルムごと切取って移植する。ブロック培地の切り取りミスは無かったが、活着後約6%の欠株が生じた(表2)。
  • 側条施肥(ペースト肥料)で一本苗(稚苗:品種「コシヒカリ」)を株間22~32cmまで疎植した結果、従来の移植と比較して収量は同等以上である(図2)。
  • 必要な種子量は1/3に、育苗面積は1/2に低減できる。また、播種と育苗作業の分離化による労働時間の平準化やプール育苗による育苗の省力化が図れる。 ロールの重量も軽く、10a当たりの必要量も少なくなるため、苗ハンドリング性が向上する。稚苗から中苗まで対応可能なので移植期間の拡大が可能となる。

成果の活用面・留意点

  • 水稲の疎植栽培に活用できる。
  • 播種機は2粒まで許容できればほぼ100%播種でき、高速化が可能である。また、発芽不良苗の発生は育苗ベルトの改善で対応可能である。育苗ベルトの資材および低価格化については今後検討する必要がある。

具体的データ

図1:ベルト状一本苗の播種・育苗・移植工程と使用機械
図1:ベルト状一本苗の播種・育苗・移植工程と使用機械

 

表1:移植時の苗の性状
表1:移植時の苗の性状

 

表2:移植精度
表2:移植精度

 

図2:ベルト状一本苗の収量(平成12年度)
図2:ベルト状一本苗の収量(平成12年度)

 

その他

  • 研究課題名:新育苗方式の開発による効率的移植栽培技術の開発・ベルト苗の育苗・移植技術の開発
  • 予算区分 :経常「官民交流共同研究」
  • 研究期間 :平成12年度(平成11~13年)