圃場のモニタリングと無線LAN機能を持つ計測ロボット:フィールドサーバ

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要約

モデル開発や生産管理・省力化・作業安全確保等に不可欠な微気象及び画像などの圃場情報を,無線インターネットを介してリアルタイムにモニタリン グする小型・低コストの計測ロボットを開発した。フィールドサーバ周辺ではホットスポットとして無線LANによるインターネットの接続も可能である。

  • キーワード:フィールドサーバ,圃場モニタリング,インターネット,無線LAN
  • 担当:中央農研・農業情報研究部・モデリング研究室
  • 連絡先:0298-38-7177hirafuji@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・情報研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

圃場の微気象データは生育予測等に必須であるが,現状では高価な農業気象ロボットを購入するかアメダスデータのメッシュ補間データを利用するしか ない。一方,現場のニーズとしては気象や作物の詳細なリアルタイムデータの他,農作業事故の発見・緊急通報,粗大ゴミの不法投棄の監視,害鳥獣対策など極 めて多種多様な情報が必要とされている。現在,これらを全てモニタリングできる観測ロボットはない。また,気象データに関するだけでも農業気象ロボットは 高価であり(数10万~数100万円),公衆回線や携帯電話等の通信に多額の維持コストがかかる。そこで,計測システム及び無線LANを1つに集約し,多 機能かつ低コストな圃場モニタリングシステムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 気温,湿度,日射量など最大5chの計測項目,8chのデジタル入出力(フィールドサーバに組み込まれた照明のon/offや灌水,暖房機の電源 等を遠隔制御できる),作物や圃場の画像(デジタルカメラによる)を無線LAN(11Mbps)で高速に伝送できるフィールドサーバを開発した(図1)。これにより,インターネット経由で世界中どこからでもリアルタイムにモニタリングや農業施設等の遠隔操作ができる。
  • フィールドサーバは100m~2km程度の範囲まで通信でき(障害物の状況による),圃場や農道等の要所要所に分散配置することで無線ネットワークが自然に形成される(図2)。
  • フィールドサーバはアクセスポイント機能を有し,どれか1台がインターネットに接続されていれば圃場やトラクタ上からでも無線でインターネットを利用することができる。
  • 市販品と安価な電子部品のみで製作可能なアーキテクチャとしたため,基本セット(温度・日射量センサ,無線LAN基板,Webサーバ基板からなる。湿度・土壌水分・距離センサ,デジタルカメラ,Hub等はオプション)は1基あたり4万円程度のコストで製作できる。

成果の活用面・留意点

  • 今後も機能向上やコストダウンが期待されるため,最新の技術情報,製作マニュアルはhttp://yummy.narc.affrc.go.jp/FieldServer/で公開。キット及び完成品は市販予定
  • 試験研究用のため長期間の運用に伴う劣化や落雷・暴風雨等に対する耐候性保証はない。
  • 電源のない場所では市販の太陽電池と充電用バッテリを別途購入する必要がある。

具体的データ

図1 フィールドサーバの本体部分

 

図2 フィールドサーバによって形成される無線LANのサービスエリア(ホットスポット)

 

その他

  • 研究課題名:超分散型圃場モニタリングシステムの設計と開発
  • 予算区分:協調システム
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:平藤雅之,深津時広
  • 発表論文等:
    1) Masayuki Hirafuji, Dongxian He, 2001, A Concept of Advanced ITAgriculture in Japan, Proc. International Conference on Agricultural Science and Technology. Beijing, China, pp.57-63.
    2) 平藤雅之,2001,圃場モニタリングのための超分散モニタリングシステムの可能性,農業電化,12,pp.8-15.