露地野菜作の無機態窒素収支を用いる土壌溶液中硝酸態窒素濃度の推定

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要約

レタス-ニンジン作付畑における深さ60cmまでの土壌及び有機質資材からの無機態窒素放出量を考慮した収支と深さ60cmの土壌溶液中硝酸態窒素濃度の実測値との間には密接な関係があり、この収支から年間平均土壌溶液中硝酸態窒素濃度を推定できる。

  • キーワード:硝酸態窒素濃度、土壌溶液、無機態窒素収支、露地野菜畑
  • 担当:中央農研・土壌肥料部・土壌診断研究室
  • 連絡先:0298-38-8901
  • 区分:共通基盤・土壌肥料、共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

地下水中硝酸態窒素濃度の環境基準化に伴い、環境保全型肥培管理がますます重要となっており、窒素投入量削減による窒素収支の改善が強く求められ ている。しかし、浸透水中硝酸態窒素濃度の実態や窒素収支改善による浸透水中硝酸態窒素濃度の低減効果を明らかにするには、多大の労力を要する。そこで、 無機態窒素収支と土壌溶液中硝酸態窒素濃度の関係を明らかにし、これに基づいて無機態窒素収支から土壌溶液中硝酸態窒素濃度を推定する方法を提示する。

成果の内容・特徴

  • レタス-ニンジン作付畑(中央農研谷和原畑圃場,表層腐植質黒ボク土)において深さ60cmの土壌溶液中硝酸態窒素濃度は全窒素投入量を反映して推移する(図1)。
  • 窒素収支(=投入量-搬出量)に基づく年間平均土壌溶液中硝酸態窒素濃度の推定値(=窒素収支÷年間浸透水量)は、対象圃場の例では、窒素収支 30kg/10a程度の場合、深さ60cmの土壌溶液中硝酸態窒素濃度の実測値と概ね一致するが、窒素収支の値がより小さい場合は過小に、より大きい場合 は過大に評価される(図2)。 ここで、深さ60cmの土壌溶液中硝酸態窒素濃度の実測値=Σ(硝酸態窒素濃度×期間毎の浸透水量)÷年間浸透水量、浸透水量=降水量-蒸発散量
  • 深さ60cmまでを根群域として、土壌(0-60cm)及び有機質資材からの無機態窒素放出量を考慮した無機態窒素収支と深さ60cmの土壌溶液中硝酸態窒素濃度の実測値の間には、密接な関係が認められる(図3)。 ここで、無機態窒素収支=供給量(土壌及び有機質資材由来量+施肥窒素量)-搬出量
  • 谷和原畑圃場近傍の農家野菜畑(表層腐植質黒ボク土)の無機態窒素収支を評価し、図3の回帰式を用いて推定される年間平均土壌溶液中硝酸態窒素濃度は、深さ60cmの土壌溶液中硝酸態窒素濃度の実測値とよく一致する(表1)。また、農家畑Aの従来の豚ぷん施用量における土壌溶液中硝酸態窒素濃度は測定されていないが、無機態窒素収支から推定可能であり、実証試験における窒素投入量削減の効果を評価できる。

成果の活用面・留意点

  • 無機態窒素収支と土壌溶液中硝酸態窒素濃度の関係は土壌タイプや降水量等の条件により異なるものと考えられ、こうした条件に対応した関係を求めることが必要となる。
  • 本推定を行うためには、土壌及び有機質資材からの無機態窒素放出量を考慮した収支の推定が不可欠である。これを支援するため、「土壌窒素収支推定システム」の改良とデータベースの補強を進めている。

具体的データ

図1 深さ60cmの土壌溶液中硝酸態窒素濃度の推移

 

図2 窒素収支と土壌溶液中硝酸態窒素濃度の推定値及び実測値の関係

 

図3 無機態窒素収支と深さ60cmの土壌溶液中硝酸態窒素濃度実測値の関係

 

表1 農家野菜畑の無機態窒素収支を用いる土壌溶液中硝酸態窒素濃度推定法の検証

 

その他

  • 研究課題名:有機物等養分の総合的管理に基づく露地野菜の環境保全型肥培管理技術の開発
  • 予算区分:関東平野高品質野菜
  • 研究期間:1997~2001年度
  • 研究担当者:三浦憲蔵、片山勝之、草場敬、古江広治、皆川望、上沢正志
  • 発表論文等:三浦ら(2002)日本土壌肥料学会講演要旨集48:116.