北陸秋どりキャベツ作の大規模水田作経営への新技術導入効果

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要約

新技術(浅層暗渠、重粘土耕耘畝立装置、クローラ運搬車汎用利用)に基づく秋どりキャベツ作を大規模水田作経営(50ha規模、転作率約30%、 稲・麦・大豆が主部門)に導入した場合には、慣行モデルに比べ所得が大きくなる。これは浅層暗渠の作物収量増効果、クローラ運搬車導入によるキャベツ収穫 作業能率改善の面積拡大効果である。

  • キーワード:キャベツ、大規模水田作経営、浅層暗渠、重粘土耕耘畝立装置、クローラ運搬車汎用利用
  • 担当:中央農研・北陸総合研究部・農業経営研究室
  • 連絡先:0255-26-3231
  • 区分:共通基盤・総合研究、共通基盤・経営
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

米産地間競争の激化と生産調整強化の下で、野菜を含めた複合化等水田利用の革新が求められている。そこで、北陸研究センタ-で開発した高度輪作営 農システムの核となる新技術(浅層暗渠、重粘土耕耘畝立装置、クローラ運搬車汎用利用)を大規模水田作経営(50ha規模、転作率約30%、稲・麦・大豆 を主部門)に導入した場合の導入効果を解明する。

成果の内容・特徴

  • 新潟県内で秋どりキャベツ(10、11月)を行う既存産地では、地場市場が収穫物の最低単価を保証する条件として、生産者に収穫物の定量出荷を求 める。しかし、この時期は降雨の影響で圃場条件が悪化し、圃場からの収穫物搬出等作業能率が低下する。そこで、一定面積のキャベツ収穫、定量出荷の確実な 実施には、慣行の手押し作業台車では対応困難であり、収穫物搬出作業にクローラ運搬車導入が必要不可欠である。
  • 新技術モデルと慣行モデル(比較対象)の設定の主な相違は次の点である(表1)。
    1) 浅層暗渠敷設により新技術モデルの方がL玉収穫比率、大豆単収、大麦単収が高い。
    2) 新技術モデルはクローラ運搬車を防除等に汎用利用し、導入経費節減を図っている。新技術導入に伴う経費は約66万円/年である。慣行技術の場合、約35万円/年である。
    3) 10a当たり投下労働時間は慣行モデル約134時間に対し、新技術モデルが約106時間で、約28時間少ない(表2)。収穫から箱詰の10a当たり作業時間は、降雨による作業性低下を見込み、新技術モデル約49時間、慣行モデル約59時間である。
  • 上記設定に基づく線形計画法によるモデル分析等の主要結果は次の通り(表3)。
    1) 新技術モデルでは慣行モデルに比べ所得が約150万円大きくなる。これは浅層暗渠の作物収量増効果、クローラ運搬車導入によるキャベツ収穫作業能率改善の面積拡大効果である。
    2) 慣行技術モデルでは降雨による能率低下がキャベツの収穫面積を171aに制限する。新技術モデルでは地域総合目標面積200aが収穫可能である。
    3) また、キャベツL玉1個の費用(物財費+出荷手数料)を試算すると、慣行モデル56.2円、新技術モデル52.6円(3.6円少ない)である。新技術モデルの方が少ないのは、キャベツL玉収穫比率が高いこと及びキャベツ収穫面積拡大効果によるものである。

成果の活用面・留意点

  • 大規模水田作農家が北陸研究センターの開発新技術を用いた秋どりキャベツ作(10、11月どり)を新規に導入する可能性を判断する参考指標として活用できる。
  • 新技術導入により作業強度は軽減されるが、この効果はモデル分析では考慮していない。この点を考慮すると、所得格差以上に新技術は評価できる。

具体的データ

表1  モデルの設定

 

表2 10a当たり投下労働時間

 

表3 新技術導入効果

 

その他

  • 研究課題名:高度輪作営農システムの経営評価と営農モデルの指標策定
  • 予算区分:21世紀7系
  • 研究期間:2000~2001年度
  • 研究担当者:塩谷幸治
  • 発表論文等:1)塩谷(2001) 平成13年度日本農業経営学会研究大会報告要旨、p138
                     2)塩谷(2001) 第37回東北農業経済学会新潟大会報告要旨、p39