格納庫から圃場まで移動して作業を行う自律走行トラクタ

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要約

市販トラクタを改造し、DGPSと光ファイバジャイロを搭載した自律走行トラクタは、圃場間無人移動ソフトと測位データが劣化した場合の位置情報補正機能を備え、移動や作業を無人で安定的に行うことができる。

  • キーワード:GPS、自律走行、トラクタ、無人農作業、測位データ
  • 担当:中央農研・作業技術部・計測制御研究室
  • 連絡先:0298-38-8812
  • 区分:関東東海北陸・関東東海・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

大豆・麦は、収穫作業を除けばトラクタ一貫作業体系を構築し易く、トラクタの自律走行により軽労化が一段と進展する。また圃場までの往復や圃場間移動が無人化できれば、さらに人手を省ける。このために、圃場間移動に適した経路計画・制御技術、及びGPS測位データが劣化しても安定的に無人で走行と農作業を行える技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 無人トラクタ(4輪駆動、55kW)は、コンピュータによってステアリング、前進/後進/停止、3点リンク等の制御が可能で、航法のために光ファイバジャイロとDGPS(精度15cm)を搭載し、車両の位置と方位の情報に基づいて制御される(図1)。制御ソフトウェアにグラフィカルなユーザインタフェースを備えていることにより、作業経路、領域の入出力などが容易に行える。
  • GPS衛星の切り変り時などに突発的に発生する測位情報の劣化に際して機能する位置情報補正プログラムを有する(図2)。このプログラムにより測位データが急激に変化しても、トラクタを一旦停止させ、測位データの安定性を判別して位置情報を正しい値に修正できる。これにより高精度に、かつ安定した走行と作業が続行できる。
  • 圃場間移動では、経路設定ソフトにて事前に地図情報から経路の直線部の始点座標と終点座標を対とするデータ列を手動入力し、これに基づいて車両制御を行う。直線部と直線部の間は曲線部とみなして適切な旋回経路が自動生成される。これにより、圃場間移動のための設定を容易に行うことが可能になり、道路上を無人走行して目的圃場に至り、無人作業をした後、再び道路走行を経て出発地点に戻ることができる(図3)。
  • 耕うん・整地、施肥播種、防除等の作業は、例えば防除作業ソフトではブーム開/閉、上/下等の動作も自動化するなど、改良を施した各作業ソフトで行える(写真1)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、自律走行技術や精密農業等のDGPSの利用場面に活用できる。
  • 特に圃場間移動に際しては、安全を十分に確保する必要がある。
  • 測位情報に対する防風林や家屋などの遮断物の影響等、利用条件に配慮する必要がある。また、GPS基準局と移動局間の無線到達距離は約2kmであり、これ以上の距離では別の通信方法を適用する必要がある。

具体的データ

図1 トラクタ搭載の制御システム 図2 GPS測位情報劣化時の補正アルゴリズム
写真1 無人防除作業

図3 圃場までの無人往来と無人防除作業時の走行軌跡の例

その他

  • 研究課題名:中山間等の往来困難地における無人作業技術の開発
  • 予算区分:交付金、重点基礎研究(科振調)
  • 研究期間:1998~2001年
  • 研究担当者:黎文、行本修、重田一人、建石邦夫、大塚寛治、井上慶一、杉本光穂
  • 発表論文等:1)井上ら(1999)農業機械学会誌61(4):103-113
                      2)大塚ら(2001)農作業研究平成13年度春季大会号:31-32
                      3)行本(2001)「農用車両のロボット化」、Techno Inovation No40:48-51