ロングマット水耕苗の活着と初期生育
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要約
水稲ロングマット水耕苗は、土付苗に比べて移植時の乾物重が軽い。しかし、通常の温度や生育遅延温度、活着限界温度および冠水条件下における活着や初期生育については、慣行土付苗とほぼ同様である。
- キーワード:水稲ロングマット水耕苗、活着、初期生育、土付苗、温度、冠水
- 担当:中央農研・関東東海総合研究部・総合研究第2チーム
- 連絡先:0298-38-8822
- 区分:関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物、関東東海北陸農業・関東東海・総合研究
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
水耕苗は、移植時の乾物重が土付苗より軽く、苗の充実度も劣るという特徴がある(表1)が、本田での活着特性については十分検討されていない。そこで、葉令の異なる水耕苗を、圃場や人工気象室内へ移植して、通常の温度や低温、および冠水条件下での活着や初期生育について、葉令展開様相や乾物生産の面から検討し、土付苗との違いを明らかにする。
成果の内容・特徴
- 圃場に移植した結果から、移植時の葉令と活着日数との間に正の相関関係が認められ、水耕苗と土付苗との間に違いはない(図1)。また、活着後の生育の早さを示す出葉速度と移植時の葉令や、新しく伸びた総発根長と苗の乾物重との関係についても、水耕苗と土付苗では、同様の傾向である(データ略)。したがって、両者には、活着や初期生育について本質的な違いは認められない。
- 低温活着の指標の1つといわれる活着限界温度近傍での枯死葉長率(全葉身長に対する枯死した葉身長の割合)をみると、水耕苗の値がやや低い傾向で、水耕苗の低温活着力は土付苗に比べて劣らない(図2)。
- 生育が遅延する低温下と通常条件での活着日数の比を比較すると、低温では値がややばらつくもののいずれの温度下でも葉令に関わりなく一定で、水耕苗と土付苗でも同様な値である(図3)。
- 生育遅延温度域における乾物生産量(CGR)について、移植時の葉令との関係で検討すると、両者には正の相関関係が認められる。同じ葉令で見ると、乾物重の軽い水耕苗が土付苗よりやや生育量は劣る傾向があるものの、葉令の進んだ水耕苗では、乾物生産は旺盛となる(図4)。
- 移植後10日間の冠水処理を行った場合、処理後の地上部重は土付苗と差はなく、生存率においても差は認められない(図5)。
成果の活用面・留意点
- 本試験は、茎損傷のない水耕苗を用いて得られたものである。機械移植などにより損傷がある場合や苗質が異なる場合は、別途検討が必要である。
- ロングマット苗は、「ロングマット苗の育苗・移植技術マニュアル(農研センター)」に準じた育苗管理を行う。
具体的データ



その他
- 研究課題名:水耕苗の生理的特性解明と高品質育苗技術の開発
- 予算区分:21世紀プロ7系
- 研究期間:2001~2003年度
- 研究担当者:北川 寿、小倉昭男、白土宏之、屋代幹雄
- 発表論文等:北川ら(2002) 日作紀 71(別1):160-161