農業情報を積極的に収集している農業経営の特徴

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要約

アンケート調査結果(325サンプル)によると、経営計画の作成やコスト・所得計算等に努めている経営、経営規模の大きな経営で、農業経営の外部から得られる各種農業情報を積極的に収集する傾向がみられる。また、農業者の意思決定タイプの違いも情報収集に対する取り組み姿勢に差異をもたらす。

  • キーワード:農業情報、情報収集、経営管理、意思決定、アンケート調査
  • 担当:中央農研・北陸総合研究部・農業経営研究室
  • 連絡先:0255-26-3231
  • 区分:関東東海北陸農業・北陸・経営作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

農業情報を効果的に提供していくには、どのようなタイプの農業経営が経営の外部から得られる農業情報を積極的に収集しているか、明確にしておく必要がある。そこで、全国各地で多様な営農を実践している農林水産省農業者大学校の卒業生(27~56歳、平均40.6歳)を対象にアンケート調査を実施し、農業情報を積極的に収集している経営とそうでない経営の相違点を明らかにする。

成果の内容・特徴

経営の外部から得られる農業情報(農地、生産技術、市場、優良事例等々に係わる各種情報)の収集に関して、「多少のコスト負担をしても積極的に情報収集を 行っている」と回答した経営を「タイプI(積極的経営群)」、「できる限り無償情報を収集している」と回答した経営を「タイプII(普通の経営群)」、「自 らは積極的に収集せずに外部から与えられる情報で十分」あるいは「情報収集を重視していない」と回答した経営を「タイプIII(消極的経営群)」とし、それら 経営群の特徴を比較すると、次のとおりである。

  • タイプIの経営群は、タイプII、タイプIIIの経営群に比べ、労働力でみた経営規模が大きく、パソコンやインターネットを利用したり、消費者に向けて情報発信を行っている経営の割合が高い(表1)。また、タイプIでは、簿記等の記帳を行っている経営の割合、コスト・所得計算を作物別や生産方法別に行っている経営の割合、経営計画を文書の形で作成している経営の割合、所得目標を設定している経営の割合も高い。意思決定面では、「自分から進んで行う意思決定が多い」、「危険を恐れない意思決定を行う傾向がある」、「大雑把でも素早い情報収集を重視する」と回答した経営の割合が、タイプIIやタイプIIIよりも相対的に高くなっている。
  • 上記の特徴が、農業情報を積極的に収集している経営とそうでない経営の違いにどの程度関与しているかをチェックするため、数量化II類を適用した。その結果、表2に示す(1)~(8)の8つのアイテムにより、タイプIとタイプIIIの経営群を83.6%の判別的中率で区分できることが確認できた。カテゴリー数量やレンジの値から判断すると、農業情報収集に対する取り組み姿勢との関係が強い上位3つのアイテムは、労働力でみた経営規模(1人、2~4人、5人以上で差異)、コスト・所得計算の有無(部門別計算を行っているか、経営全体の計算を行っているかでも差異)、短期計画の有無(文書化の有無でも差異)であることが分かる。他方、(6)~(8)の意思決定タイプについては、農業情報の収集姿勢に影響するものの、その程度は労働力規模、コスト・所得計算の有無、短期計画の有無等に比べると弱い。

成果の活用面・留意点

  • 本情報は、農業情報の提供システムを検討したり、外部農業情報の収集と経営管理、意思決定とに関わる農業者の経営行動を分析する際に、参考情報として活用できる。

具体的データ

表1.農業情報を積極的に収集している農業経営の特徴

 

表2.農業情報を積極的に収集している農業経営とそうでない経営の判別

その他

  • 研究課題名:高度輪作営農システム定着のための土地利用調整支援方策の解明
  • 予算区分:21世紀7系
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:土田志郎