葉色による「コシヒカリ」の圃場内出穂日較差予測法
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要約
地力差等により圃場内に生ずる部分的な生育差のうち,水稲の出穂日較差は分げつ最盛期以降の葉色と密接な関連があり、移植栽培の「コシヒカリ」では穂首分化期頃の葉色値(SPAD値)を用いることにより予測することができる。
- キーワード:予測、出穂、生育差、水稲、コシヒカリ
- 担当:中央農研・北陸水田利用部・栽培生理研究室
- 連絡先:0255-26-3241
- 区分:関東東海北陸農業・北陸・水田畑作物、北陸・総合研究
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
大区画圃場の整備・普及にともない、地力差等に起因する圃場内での水稲の生育較差が問題となっている。中でも出穂日の較差は成熟のバラツキを招き、米の外観品質を低下させるので、局所管理等を実施するためにも予測法の開発が求められている。本成果では生育期の葉色(SPAD値)から出穂日の圃場内較差を予測する方法を開発した。
成果の内容・特徴
- 同一圃場内における水稲の出穂日は、分げつ最盛期以降の葉色(SPAD値)と相関があり、なかでも穂首分化期頃はより高い相関を示す(図1)。
- 移植栽培した「コシヒカリ」を用いて、1998年~2000年の3か年に施肥量等を変えて人為的な圃場内生育較差を作出し、出穂前30~35日のSPAD値と出穂日の関係を調査した。各年次の最早出穂日を0とする相対出穂日とSPAD値との関係から、次の二次式で示される出穂日較差の予測式を得た(図2)。
Y=0.0383X^2-2.3757X+37.325(Y:相対出穂日、X:SPAD値)
- この式を用いることにより、圃場内の出穂日の最大較差や部分較差を予測することができる。すなわち、穂首分化期頃の出穂前30~35日に計測した圃場内のSPAD値を代入して得られる予測相対出穂日の差し引きが予想される出穂日較差の日数となり、最大較差は最大値-最小値で、部分較差はそれぞれの差し引きで得られる。
- 2001年に「コシヒカリ」圃場で人為的な生育較差を作出し予測式の有効性を試した。出穂前35日のSPAD値を計測し、予測式に代入して得られた予想最大出穂日較差は6.6日であり、実測出穂日の較差6日とほぼ同程度であった(表1)。各SPAD値から得られる部分較差の予測値もほとんどが実測値と1日以内の誤差であった(表1)。
成果の活用面・留意点
- 大区画圃場での移植水稲の局所管理技術開発を行う際、生育較差の診断・推定法として用いることができる。
- 予測式は圃場試験(2筆)で得られたものであり、普及技術化に当たってはさらに多くのデータ蓄積が必要である。
- SPAD値は完全展開第2葉の葉身中央部を20株、1株3枚測定した。出穂期は50%出穂である(SPAD値調査20株で有効分げつの半数以上が出穂した株が半数以上に至った日)。
具体的データ



その他
- 研究課題名:水稲直播栽培における生育ムラに対応した出穂変動予測手法の開発、水稲の出穂変動要因の解明
- 予算区分:軽労化農業、経常
- 研究期間:2000~2001年度(軽労化農業)、1998~1999年度(経常)
- 研究担当者:松村修、山口弘道、千葉雅大
- 発表論文等:1)松村修ら(2001) 北陸作物学会報36:62-64.