温湯消毒と巻取補助装置を組入れたロングマット水耕苗の育苗・移植体系

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要約

水稲ロングマット水耕苗の育苗・移植技術において、温湯消毒法および巻取補助装置を組み入れることにより、育苗から移植までのワンマンオペレーション可能な、環境保全にも配慮した、省力・軽作業の移植栽培体系ができる。

  • キーワード:水稲ロングマット水耕苗、温湯消毒、巻取り、軽作業、移植栽培体系
  • 担当:中央農研・関東東海総合研究部・総合研究第2チーム
  • 連絡先:0298-38-8822、電子メールkitaga@naro.affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

ロングマット水耕苗の育苗・移植技術は、田植え作業を軽労化し、同時に省力化をもたらす技術として期待される(平成8,12年成果情報、以下同様)。ロングマット水耕苗技術に新たな要素技術を組み込むことで、ワンマン化が可能で、環境にも配慮した省力移植栽培体系を確立するとともに、その技術の特徴と栽培上の留意点を明かにする。

成果の内容・特徴

  • 水耕育苗では、種子消毒剤による根の伸長阻害(H12)を避けるため、農薬は使わず温湯消毒した種籾を用いる(図1)。また、山を削り取って床土を採取する必要もない。循環型養液栽培で、加えた肥料は殆ど稲に吸収させてから廃液する方式(H12)である。これらのことから、ロングマット水耕育苗は環境にも配慮した技術である。
  • 育苗中の病気や藻の発生は、出芽までに日数が長くかかった場合に多く、出来るだけ早く出芽を揃えることが肝要である。このため、催芽が充分に進んでおり、かつ均一に揃った種籾を播種し、播種後3日間位は高温(昼間30夜20°C以上)で管理を行う。
  • 巻取補助装置は、無段階変速装置を付加して操作性を向上している。これを使えば鉄板を用いた時間の半分以下で、しかも1人で巻き取れる。巻取補助装置により、播種から移植まで完全ワンマン化が可能で、田植えまでの作業時間は土付苗の半分以下となる。
  • ロングマット水耕苗では欠株がやや多いものの、活着は土付苗と殆ど差はなく(H13)、除草剤も活着後は同様に散布できる(H11)。出穂は1日程度遅れるものの、収量については土付苗と比較して遜色ない(表1)。
  • 経営評価の結果、土付苗移植等慣行体系では60haが限界規模だが、ロングマット苗を組込んだ輪作体系では93haとなり、所得も1.5倍で、その時のロングマット苗面積は9haとなる。更に、軽労化を重視するとロングマット苗が土付苗に代わり採用される(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 育苗・田植えを行うには、市販の育苗関連機器とロングマット田植機(機種限定、モニター販売中)が必要で、巻取補助装置もまもなく市販化の予定である。
  • 苗の出来・不出来が、巻取りおよび移植精度に大きく影響する。このため、育苗は、「ロングマット苗の育苗・移植技術マニュアルVer.2(中央農研)」に準じて行う。

具体的データ

図1.ロングマット水耕苗の育苗・移植栽培技術の作業体系と作業時間

 

表1.ロングマット水耕苗の10a当たり収量

図2.ロングマット水耕苗移植技術の導入効果

その他

  • 研究課題名:ロングマット苗移植技術の体系化
  • 予算区分:官民交流共同研究、実用化促進(地域総合)、21世紀プロ7系
  • 研究期間:1994~2003年度
  • 研究担当者:北川寿、小倉昭男、白土宏之、梅本雅、屋代幹雄(東北研)、宮坂篤、佐々木豊、森田弘彦(九州研)、
                      田坂幸平(九州研)
  • 発表論文等:特許取得:田植え方法、特許第3367763号(2002.11)
                      田坂ら(1996)農機誌58(6):89-99