近赤外分光(NIR)法による白米中のグルテリン含量簡易測定法

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要約

低グルテリンおよび一般の品種・系統の白米粉について、NIR法で1100~2460nmの波長領域のスペクトルを測定し、このスペクトルを2次微分した後、部分最小二乗(PLS)法で検量線を作成することにより、白米中のグルテリン含量を簡易に測定できる。

  • キーワード:グルテリン含量、白米、近赤外分光法、PLS法
  • 担当:中央農研・北陸地域基盤研究部・稲育種研究室
  • 連絡先:電話025-526-3239、電子メールkomakiy@affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・北陸・水田畑作物
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

近年、白米中の易消化性タンパク質であるグルテリン含量が少ない品種「春陽」等が育成され、タンパク質摂取量を制限した食事用の飯米として利用が期待されている。
しかし、低グルテリン品種に一般品種が多量に混入したり、一般品種と取り違えたりすることにより、タンパク質の摂取制限をしている利用者の健康に悪影響を及ぼす恐れがあることから、生産した種籾および米について、SDS電気泳動法によりグルテリン含量の分析を行い、その結果を表示して販売している。しかし、グルテリンの分析は、特定の分析機関において有料で行われているため、作付の拡大に対応した、より簡易な測定法が求められている。そこで、NIR法によるグルテリン含量の簡易測定法を検討する。

成果の内容・特徴

  • 検量線作成のための材料として、「春陽」等の低グルテリン品種・系統および一般品種の白米粉を供試する(表1)。また、施肥条件、年次、栽培地域等の栽培条件が異なる材料を加える。
  • グルテリン含量の対照分析値はSDS電気泳動法で白米中タンパク質に占めるグルテリンの割合を求め、この割合と白米中総タンパク質含量から算出する。
  • 検量線作成用の白米粉について1100~2460nmの波長領域のスペクトルを測定し、このスペクトルを2次微分し部分最小2乗回帰法(PLS法)によりグルテリン含量を測定するための検量線を作成する。
  • 作成した検量線の精度を示す検量線作成用試料の対照分析値とNIR法による測定値の残差標準誤差(SEC)は0.093で良く適合する(図1)。
  • 検量線作成用試料と異なる試料を実際に測定した場合の精度を表す残差標準誤差(SEP)が0.216で、NIR法による測定値と対照分析値の誤差の平均値で表されるバイアスは-0.103であり、白米粉のグルテリン含量の測定が可能である(図2)。
  • 従来法のSDS電気泳動法と比較して、熟練した技術を必要とせず簡便にグルテリン含量が測定できる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、1100nm~2460nmの波長を連続して測定可能なNIR機器に適応できる。
  • 本研究の検量線はニレコ社製NIRS6500を使用して作成され、データはフロッピー等での配布が可能であり、ニレコ社製の機器に組み込むことでグルテリン含量を測定できる。この場合、1回の測定に約20gの白米粉が必要である。
  • 今後、栽培年次、栽培地域等栽培条件の異なる品種および新たな玄米特性をもつ育成品種のデータを、本成果のデータに加えて検量線を作成し直すことで、更に幅広い品種・系統のグルテリン含量の測定が可能になる。

具体的データ

表1 供試材料

 

図1 グルテリン含量の検量線の精度図2 グルテリン含量の検量線の評価

その他

  • 研究課題名:寒冷地南部向き晩植適性を備えた良食味品種・新形質米品種の育成
  • 予算区分:21世紀プロ
  • 研究期間:2001~2002年度
  • 研究担当者:小牧有三、清水恒、上原泰樹、笹原英樹、後藤明俊、三浦清之
  • 発表論文等:清水ら(2002) 日作東北支部報47:21-23