硫酸根を含む肥料の施用が転換畑ダイズのカドミウム濃度に及ぼす影響
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
硫酸根を含む肥料を施用すると、硫酸根を含まない肥料を施用した場合に比べてダイズ子実のカドミウム濃度が高まる。しかしこの現象は、土壌pHの低下に伴うものであり、pHを適切に管理することによって解消できる。
- キーワード:ダイズ、カドミウム、転換畑、土壌、pH
- 担当:中央農研・土壌肥料部・土壌管理研究室
- 連絡先:電話0298-38-8827、電子メールsumi@affrc.go.jp
- 区分:関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
CODEX委員会において、食品中のカドミウム(Cd)濃度について基準値が検討されており、農作物中のCd濃度を低減させるような対策技術を開発する必要がある。硫酸根を含む肥料の施用は、還元条件下で硫化物を生成して水稲のCd吸収を抑制すると認められているが、これが酸化的条件の転換畑では、逆にダイズなどのCd吸収を増加させることが懸念される。そこで、転換水田への硫酸根を含む肥料の連用がダイズのCd吸収に及ぼす影響を調べた。
成果の内容・特徴
- 数種類の灰色低地土、淡色黒ボク土、赤黄色土などに硫酸根を含む肥料あるいは硫酸根を含まない肥料を2000年から2002年にかけて連用し、水稲作の後にダイズ(主としてタチナガハ)を栽培して子実中のCd濃度を測定した。供試圃場はいずれも非汚染土壌である。
- 硫酸根を含む肥料を施用した圃場に生育したダイズのCd濃度は、硫酸根を含まない肥料を施用した圃場のダイズに比べて、若干高い傾向を示す(表1~3)。
- 硫酸根を含む肥料を施用した圃場の土壌pHは、硫酸根を含まない肥料を施用した圃場の土壌pHに比べて、若干低い傾向を示す(表1~3)。
- ダイズ子実中のCd濃度は土壌pHが高いほど低いという関係にあり、両者の関係は施用肥料が硫酸根を含有するか否かにかかわらず一定である(図1)。従って、硫酸根を含む肥料を施用した処理区で認められたダイズ子実中のCd濃度の上昇は、硫酸根に特異的な現象ではなく、一般的な土壌pHの低下に起因すると判断される。
- 以上の結果から、硫酸根含有肥料の施用はダイズ子実中のCd濃度を高める要因の一つになり得るが、この問題は土壌pHを適切に維持することによって回避できる。
成果の活用面・留意点
- 無硫酸根肥料を3年連用した圃場の一部で、水稲の葉色が淡くなる現象が観測され、水稲及びダイズの収量が数%~十数%低下した(データ略)。無硫酸根肥料の連用によって硫黄欠乏が生じる可能性があるので注意を要する。
- 硫酸根区では硫安、過石、硫加を、無硫酸根区では尿素、重焼リン、塩加を施用した。
具体的データ




その他
- 研究課題名:カドミウム対策土壌の転換畑化によるリスク評価
- 予算区分:カドミウム
- 研究期間:2000~2002年度
- 研究担当者:伊藤純雄、近藤始彦、高橋 茂