ピートモス成型ポット移植によるトウガラシマイルドモットルウイルスの土壌伝染防止

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要約

根が直接ウイルス汚染土へ触れないように、ピーマン苗をピートモス成型ポットごと移植すると、土壌伝染によるモザイク病の発生が抑えられる。

  • キーワード:ピーマン、トウガラシマイルドモットルウイルス、ピーマンモザイク病、土壌伝染性ウイルス病、ピートモス成型ポット
  • 担当:中央農研・病害防除部・病害防除システム研究室
  • 連絡先:電話029-838-8885、電子メールtake2001@affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・関東東海・病害虫
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

ピーマンモザイク病の病原ウイルスであるトウガラシマイルドモットルウイルス(Pepper mild mottle virus = PMMoV)は、種子、土壌及び管理作業により伝染するが、主要な伝染要因は土壌伝染である。土壌伝染は、これまで臭化メチル剤の土壌くん蒸により防除されてきたが、本剤が2005年に全廃されることから、臭化メチル代替防除技術を緊急に開発する必要がある。そこで、本ウイルスのピーマン移植時における土壌伝染防止について検討する。

成果の内容・特徴

  • おピートモス成型ポット(縦5cm x 横5cm x 深さ5cm)、セルトレー(径5cm)、ビニールポット(径9cm)にそれぞれ健全土壌(セルトレーは滅菌黒ボク土、それ以外は粒状園芸培土)を入れ、健全ピーマン種子(品種:昌介)を播種し、温室で約30日間育苗した。
  • PMMoV土壌伝染系を確立するため、PMMoVに感染したピーマン根を常温で風乾後細切りし、健全土(川砂+10%ピートモス)と混合し、汚染土とした。ビニールポットで育成した健全ピーマン苗をポットから取り出し、根部土壌をふるい落とし、汚染土を詰めたビニールポットに移植した。ピーマン苗を移植して2~3週間後にはモザイク病が発病し、汚染根の混合量が増えるにつれてモザイク病の発病率も高くなる(図1)。
  • ピーマン苗を汚染土(粒状園芸培土+0.5%(w/w)PMMoV汚染根)ポットに移植し、発病状況を調査した。移植は、「ピートモス成型ポット苗移植」はポットごと、「セルトレー苗移植」は土壌が付いたままトレーから取り出して、「土壌落とし苗移植」は図1と同様にビニールポット苗の根部土壌をふるい落として行い、40日間発病経過を調査した。対照として、ピーマン種子を汚染土に直接播種し、温室内で60日間発病経過を調査した。「ピートモス成型ポット苗移植」すると、発病株率で0~14%程度にモザイク病の発生が抑えられる(図2、図3、図4)。

成果の活用面・留意点

  • 栽培圃場におけるピーマン移植においても、ピートモス成型ポット苗移植により、PMMoVの土壌伝染の軽減が期待できる。
  • ピートモス成型ポット苗は、移植直前まで根がポット外へ出ないように育成する必要がある。
  • ピーマンの汚染根が主要な感染源のひとつとなっており、土壌伝染を防ぐためには、圃場における残根処理の対策が必要である。
  • 土壌伝染防止には、移植時に根が汚染土と触れないことが重要であると考えられ、ピートモス成型ポット以外にもペーパーポット等の利用が考えられる。

具体的データ

図1 土壌落とし苗移植でのPMMoV汚染根混合量とピーマンモザイク病発病株率 図2 各種移植法によるPMMoV汚染土への移植

 

図3.実験に使用したピートモス成型ポット 図4 PMMoV汚染土へ移植したピーマン苗

その他

  • 研究課題名:トウガラシマイルドモットルウイルス等タバモウイルスの土壌伝染経路の解明
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2004年度
  • 研究担当者:大木健広、津田新哉、本田要八郎