水稲ロングマット水耕苗の欠株発生と収量
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要約
ロングマット苗の移植栽培では、田植え直後の浅水管理により欠株発生を抑えることができる。また、1株植付本数を少なくすると欠株は増加するが、欠株率20%程度までなら慣行栽培と比較しても、収量は変わらない。
- キーワード:水稲ロングマット水耕苗、移植栽培、欠株、収量、損傷、植付本数
- 担当:中央農研・関東東海総合研究部・総合研究第2チーム
- 連絡先:電話0298-38-8822、電子メールkitaga@naro.affrc.go.jp
- 区分:関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
ロングマット田植機を用いた移植では、苗が傷ついて生育途中で枯死する個体も発生する。欠株を抑えるため、播種量を180~200g(乾籾/箱相当)とし、植付本数を多く(6~7本)することで対応している。しかし、1株植付本数の多少は、生育や収量に大きな影響を与える。そこで、生育の安定を図るため、植付本数や初期水管理の違いが、ロングマット苗の欠株発生や収量に及ぼす影響について明らかにする。
成果の内容・特徴
- ロングマット苗のマット剛性は、土付苗に比べて弱いため、田植え時に変形しやすいく、茎の途中で折れたり切れた苗損傷も発生しやすい。このため田植え直後の欠株が多く、更に活着までの間にも欠株が増えやすい。しかし、移植直後に浅水管理を行うことで、浮き苗等の発生を抑え、欠株発生を少なくできる(図1)。
- ロングマット田植機を用いた場合、標準では1株植付本数は7本程度で、苗の掻取量を少なくすると、4本程度に減少する。苗掻取量が少ない条件では、正常苗割合は減少する傾向にあるが、櫛形苗押えの付いたロングマット田植機では、7~8割と比較的安定している(図2)。
- ロングマット苗は、初期の乾物重が小さいため(表1)、ややあと勝り的な生育相を示すが、生育時期については土付苗とほとんど差がなく、出穂が1日程遅れる程度である。欠株と収量の関係をみると、欠株率がかなり高くなると概して減収する関係が認められる。そこで、両者の関係を2次回帰曲線で近似して、ロングマット苗の減収程度を算出すると、概ね欠株率20%までなら、土付苗で欠株の全くない条件と比較しても、収量は変わらない(収量比98.3~101.2%)(図3)。
- この時の収量構成要素を比較すると、欠株率20%以上を示す掻取量の少ない区では穂数は減少するが、逆に1穂籾数が増加して、m2当たり籾数には他の区と差はない(図4)。
成果の活用面・留意点
- 本試験は、水稲品種コシヒカリを供試して、ロングマット田植機で温暖地の5~6月に移植栽培(灰色低地土)して得られたものである。条件が異なる場合には、別途検討が必要である。
- ロングマット苗は、「ロングマット苗の育苗・移植技術マニュアルVer.2(中央農研)」に準じた育苗管理を行う。
具体的データ




その他
- 研究課題名:ロングマット苗移植技術の体系化
- 予算区分:地域総合、21世紀プロ7系
- 研究期間:1998~2003年度
- 研究担当者:北川 寿、小倉昭男、白土宏之、屋代幹雄(東北農研)
- 発表論文等:1)北川ら(2001) 日作関東支部報16:24-25