水田に発生するイネ科多年生雑草の茎切片からの出芽特性

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要約

水田に発生するイネ科多年生雑草の繁殖源である茎切片は、湛水後代かきした土壌中に埋没させると、出芽が著しく抑制され、多くの草種は速やかに土壌中で死滅するが、ギョウギシバやチクゴスズメノヒエは、3週間程度埋没させても完全には死滅しない。茎切片が大きいほど、再生する個体の生長は早い。

  • キーワード:イネ科多年生雑草、茎切片、湛水、出芽、節位、茎生重
  • 担当:中央農研・耕地環境部・水田雑草研究室
  • 連絡先:電話029-838-8953
  • 区分:共通基盤・雑草、関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

近年、水田内で約10種の匍匐性イネ科多年生雑草が増加傾向にある。これらは生態的特性において共通点と相違点があるため、効果的な制御方策確立の障害となっている。イネ科多年生雑草の水田における生態的特性に基づいた効率的制御手法の確立に資するため、主要な種について、茎切片からの出芽特性を解析する。

成果の内容・特徴

  • イネ科多年生雑草の茎切片は、土壌表面に露出した場合には出芽するが、湛水後代かきした土壌に埋没するとほとんど出芽できない。湛水後落水した場合においても、出芽率は極めて低い(図1)。サヤヌカグサ、アシカキ、ハイコヌカグサ、チゴザサの茎切片は、湛水後代かきした土壌に埋没すると速やかに死滅するが、ギョウギシバおよびチクゴスズメノヒエの茎切片は3週間以上生存している(図2)。
  • 茎切片から再生する個体の生長速度は、茎の節位によって異なる。キシュウスズメノヒエおよびチクゴスズメノヒエでは、基部付近の茎は太く、節から再生する個体の生長は早いが、アシカキおよびギョウギシバでは、基部付近の茎は細く、節から再生する個体は生長が極めて遅い(図3)。
  • 主要な種の茎切片の生重と茎から再生する個体の乾物重には正の相関が見られ、特にキシュウスズメノヒエ、チクゴスズメノヒエで高い(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 水田内において茎切片から再生するイネ科多年生雑草の耕種的除草体系を策定する際の基礎的知見として活用する。また、イネ科多年生雑草に関する試験研究を進める上で、均一な栽培条件を設定する際に有効な情報として活用する。
  • 浅水代かきなどで茎切片を埋没させることによって、茎からの再生を抑制することができるが、湛水条件下においても茎切片が土壌表面に浮き上がる状態では出芽は可能なので留意する。春~夏期以外の時期に湛水後代かきした土壌に埋没させた茎切片の死滅については、別途確認する必要がある。

具体的データ

図1.イネ科多年生雑草の稈切片からの萌芽に及ぼす置床方法と水管理の影響

 

図2  湛水土壌中に埋没したイネ科水田雑草の茎切片の生存率

 

図3 茎切片の節位と再生芽の草丈の関係

 

図4 茎切片の生重と再生芽の乾物重との関係

 

 

その他

  • 研究課題名:イネ科水田多年生雑草の生態的特性に基づく効率的制御技術の確立
  • 予算区分:新雑草防除
  • 研究期間:2000~2002年度
  • 研究担当者:牛木純、森田弘彦(九農研)、川名義明