塩酸抽出Stat型AAS法による大豆粒中カドミウムのプロセス定量分析

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要約

約105℃、48時間以上乾燥して粉体を調製した後、1molL-1塩酸振り混ぜ抽出を行い、上澄液をStat型AAS(補助バ-ナスリットセル装着型原子吸光測光装置)で測定することにより、カドミウム濃度(Cd50ngg-1以上)の迅速定量分析ができる。

  • キーワード:カドミウム、大豆粒粉体、塩酸抽出、Stat 型AAS法、
  • 担当:中央農研・北陸水田利用部・土壌管理研究室
  • 連絡先:電話025-526-3244、電子メールhnaka@affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・北陸生産環境、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

Codex委員会では、大豆子実中カドミウム濃度の規制値が論議されており、国内においても今後、多量の検体を定量分析する技術が必要になってくる。しかし、従来のカドミウム定量分析法は、酸加熱分解・有機溶媒抽出、原子吸光分析法が主で、作業能率が劣り熟練を要する。また各種無機酸や有機溶媒を使用するので分析作業者への被曝、実験廃ガスや廃液の処理も無視できない。このような酸分解等の処理をせず、大量の検体数を迅速・簡便に処理するため、大豆粒粉体を塩酸抽出した後、光路部で若干炎が滞留する型式のStat装着型原子吸光測光装置を用いるプロセス定量分析法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 大豆粒約15gを成形アルミ箔に採り約105℃、48時間以上乾燥した後、小型粉砕器(コ-ヒ-ミル等)で粉体(90%以上が約0.5mm篩通過)とする。次に試料2.00gに1molL-1塩酸20.0gを分注器で添加、室温にて約1時間振り混ぜ抽出、固液層が分離するまで静置する。上澄液を乾燥濾紙で濾過し、濾液をStat装着型原子吸光測光装置(Stat-AAS)に導入し測定(波長228.8nm)する(本法)(図1)。
  • 本法と塩酸抽出・ICP-OES(誘導結合プラズマ発光分析)法の定量分析値を比較した結果、プロセス定量分析として十分利用できる分析精度が得られた(図2)。
  • 本法と過塩素酸・硫酸加熱分解GF-AAS(黒鉛炉原子吸光分析)法、マイクロウェ-ブ加熱分解しICP-OES法およびGF-AAS法の4法で定量分析した。それぞれ定量分析値を比較するとプロセス定量分析に十分利用できる分析の正確さが得られた(表1)。
  • 本法のプロセス定量分析操作は約100検体を処理する場合、分析作業者1名、1日約6時間労働とし、約2日間の所要時間でできる。分析操作に約5~6日間必要なマイクロウェ-ブ加熱分解・GF-AAS法等と比べて、迅速となった。また、高度な化学分析技能は必要なく、酸加熱分解等を行わないのでドラフト等の化学実験室は必要無いが、換気のよい分析作業室が必要である。更に本装置は、ICP-OESやGF-AAS装置に比べて安価に導入できる。

成果の活用面・留意点

  • 本法は、従来法に比較し迅速・簡便なプロセス定量分析法であり、大豆生産団地の大豆中カドミウム濃度のスクリ-ニングができる。
  • 分析装置は、可燃性のアセチレンガスを用いるので無人運転が出来ない、実験者の目を炎光より保護する必要がある。また機種購入に当って機種によっては、感度不足の機種があるので留意しなければならない。
  • なお、塩酸抽出・AASの定量限界は、Cd300~600ngg-1であった。

具体的データ

図1 プロセス定量分析操作 図2 塩酸抽出法による定量分析値比較

 

表1 分析方法間の比較

その他

  • 研究課題名:大区画水田における科学計測に基づく施肥技術の確立
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1997~2002年度
  • 研究担当者:中島秀治、関口哲生、亀川健一