ファージは非病原性細菌と混合施用するとイネ白葉枯病を抑制できる
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要約
イネ白葉枯病はファージのみの処理では発病抑制効果はないが、白葉枯病菌および雑草由来の非病原性細菌の両者に溶菌作用を示すファージを、後者で増殖しその懸濁液を散布すると、顕著な発病抑制効果が現れる。
- キーワード:イネ白葉枯病、ファージ、非病原性細菌
- 担当:中央農研・病害防除部・細菌病害研究室
- 連絡先:電話029-838-8931、電子メールmigazea@affrc.go.jp
- 区分:関東東海北陸農業・関東東海・病害虫
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
「安全性の高い食糧生産」と「環境負荷低減」は、今日の農業における喫緊の課題であり、植物病害防除に関してもこれを満たす防除法の開発が急務となっている。細菌病害防除にはファージを利用すると、これらの条件を満たす新防除法ができる可能性がある。従来、ファージの宿主である細菌への特異性は高いといわれてきたが、最近、イネ白葉枯病菌と雑草由来の非病原性細菌の両者を溶菌するファージの存在が明らかにされた。そこで非病原性細菌を利用したファージによる白葉枯病防除の可能性を検討する。
成果の内容・特徴
- 雑草(ヒロハノウシノケグサ)の根圏土壌から、イネ白葉枯病菌Xanthomonas oryzae pv. oryzae と雑草(ヌカキビ)由来の非病原性細菌X. campestrisの両者を溶菌するファージを分離した。このファージは、頭部約50-60nm、尾部約210-230nmのマッチ棒状である。
- 両細菌を溶菌するファージを雑草由来非病原性細菌で増殖し、その懸濁液を温室内鉢植え栽培のイネに散布しておくと、白葉枯病の発病が顕著に抑制される(図1)。
- フィルターろ過したファージだけの散布では抑制効果はなく、非病原性細菌と混合して散布することにより効果が現れる(図2)。
- 接種24日後にイネから回収された白葉枯病菌24菌株およびX. campestris 4菌株は、すべてファージ感受性であった。
成果の活用面・留意点
屋外では、連続的に種々のファージタイプの白葉枯病菌が供給されうるので、実用化には施用方法、ファージタイプ、耐性菌出現等についてさらに検討する必要がある。
発病抑制効果は、ファージが非病原性細菌内で増殖し、溶菌させ、活性のある多量のファージが白葉枯病菌に到達することで出現していると推察される。
具体的データ


その他
- 研究課題名:イネ白葉枯病等の発病に影響を及ぼす細菌の有効利用
- 予算区分:委託プロ(21世紀プロ5系)
- 研究期間:2002~2004年度
- 研究担当者:畔上耕児、小原達二