多くの病害に適用できる拡張性を持つ病害発生予測システム

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要約

気温と濡れ継続時間に対する感染・発病程度の関係がわかる病害であれば、パラメータの設定により適用可能な病害発生予測システムである。本システムは複数の気象データベースに対応し、インターネットを通して誰でも利用できる。

  • キーワード:病害発生予測システム、気象データベース、MetBroker、インターネット
  • 担当:中央農研・農業情報研究部・モデル開発チーム、千葉農総研・生産環境部・病理研究室
  • 連絡先:電話 029-838-8973、電子メール sugak@naro.affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・情報研究、病害虫(病害)
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

病害管理の高度化を目指すうえで、薬剤散布の適否あるいは適切な散布時期の判断を支援する技術開発は必須であり、発病程度 を推定・予測するモデルは有効なツールである。気象データを利用してモデルを実行する病害発生予測システムはこれまでにも開発されているが、開発言語や利 用する気象データベースの構造などの違いから、システムを他の病害に拡張することや異なる気象データベースに対応することは容易ではなかった。そこで、多 くの病害に適用できる柔軟な拡張性を持ち、かつ複数の気象データベースに対応した病害発生予測システムを開発する。

成果の内容・特徴

  • Duthie(1997)の報告による感染程度推定モデル(図1)は、植物体葉面の濡れにより感染が生じるタイプの多くの病害に適用可能である。このモデルをJava技術によりプログラム化し、インターネットを通してWebブラウザ上で利用できるAppletの形にしている(図2)。
  • ある病害について接種試験等により気温と濡れ継続時間に対する感染・発病程度の関係がわかれば、そのデータをDuthieモ デルに当てはめてパラメータの値を求め、パラメータ値を本システムのAppletに登録できる。ナシ黒星病(幸水)とナシ黒斑病(二十世紀)のパラメータ 値がすでに登録されており、パラメータ設定の画面でいずれかの病害名を選択するとパラメータ値が自動的に設定される(図23)。また、この画面では任意のパラメータ値も入力できる。
  • 本システムは気象データ仲介ソフトである“MetBroker”の機能を利用しており、MetBrokerに登録されているAMeDASほか複数の気象データベースを、そのデータ構造の違いを意識することなく利用できる(図22)。一定地域内における複数の気象観測地点のデータを同時に取り込む機能により、発病程度の予測結果を地図上に表示できる(図24)。
  • Duthieモデルの変数である濡れ継続時間は結露センサーにより計測するが、本システムは雨量や湿度から濡れ発生の有無を推定するモデルのAppletを備えており、濡れ継続時間を推定してDuthieモデルを実行できる。図24はAMeDASの雨量データを使って推定した例である。

成果の活用面・留意点

  • 本システムは、中央農業総合研究センター農業情報研究部によるWebサイト「Javaによる作物生育、病害虫・雑草発生予測モデル」内で試験的に公開されおり、次のURLにアクセスしてモデルを実行できる。URL:http://cse.naro.affrc.go.jp/ketanaka/model/
  • 結露センサーは機種や設置方法によって出力特性が異なることがあるため、モデルを実行する際にはパラメータ設定画面(図23)で濡れ判定の閾値を調整する必要がある。
  • 本システムと簡易気象ロボット“フィールドサーバ”を併用すれば、任意地点におけるリアルタイムの微気象データにもとづく病害予測が容易に実現できる。

具体的データ

図1 Duthieモデルの関係式および適用例

 

図2 Duthieモデルの関係式および適用例

 

その他

  • 研究課題名:生物情報・環境情報の同時収集による病害虫管理支援システムの開発
  • 課題ID:03-04-01-01-01-03
  • 予算区分:協調システム
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:菅原幸治、田中 慶、Laurenson, Matthew、渡邊朋也、大谷 徹(千葉農総研)、梅本清作(千葉農総研)、竹内妙子(千葉農総研)
  • 発表論文等:1)「ナシ病害発生予察モデルの概要」http://riss.narc.affrc.go.jp/nashi/model.htm
                      2) 菅原ら(2002)農業情報学 4:22-26
                      3) 大谷ら(2002)関東病虫研報.49:47-49
                      4) 渡邊(2003)農業および園芸 78(1):195-200