イネウンカ類の長距離移動シミュレーションモデル
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要約
飛び立ちや飛翔条件などをモデル化したウンカは、気象の数値予報モデルによって計算された3次元大気場の中をランダムウォークによって拡散しながら風と同じ速度で移動する。本モデルにより高精度の長距離移動解析を行うことができる。
- キーワード:イネウンカ類、長距離移動、数値予報モデル、ランダムウォークモデル
- 担当:中央農研・農業情報研究部・グリッドコンピューティングチーム
- 連絡先:電話029-838-7176、電子メールaotuka@affrc.go.jp
- 区分:共通基盤・情報研究、共通基盤・病害虫(虫害)
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
主に梅雨期に中国大陸から長距離移動により日本に飛来侵入するトビイロウンカ、セジロウンカの飛来解析はこれまで
850hPaの等圧面での風の分布から推測されていた。しかしこの手法はその空間分解能が約150kmと粗く,単一気圧面で12時間間隔のデータを用いて
いるため解析精度が低かった。気象の数値予報モデルを用いて出来るだけ正確な3次元大気場をシミュレーションして、その中をモデル化したウンカを移動させ
ることができれば、解析精度が向上すると考えられる。そこで本研究では最先端の数値予報モデルと放射性物質大気分散モデル(日本原子力研究所開発)を応用
し、イネウンカ類の飛翔に関与する諸条件を組み込んだ,高精度な長距離移動シミュレーションモデルを開発した。
成果の内容・特徴
- 本手法は正確な3次元大気場をシミュレーションする数値予報モデルと、得られた大気場を用いてウンカの移動を計算する長距離移動シミュレーションモデルとからなる(図1)。数値予報モデルの出力が長距離移動シミュレーションモデルの入力となる。
- 数値予報モデルは公開されている米国大気研究センターのMM5を用いる。
- 長距離移動シミュレーションモデルGEARNは日本原子力研究所の放射性物質分散モデルが原型である。これを改良して飛び立ちや飛行条件などイネウンカ類の挙動をモデル化している。
- 飛び立ち域は任意に設定できる。解析では地形や水稲栽培地帯を考慮し,約50kmの矩形範囲を中国大陸と台湾に複数設定した。
- ウンカは日没,夜明け時の各1時間,ランダムに一定数飛び立たち、その後1時間は0.2m/sで上昇するように設定されている。
- 飛び立ち後、ウンカは拡散の効果を考慮しつつ風と同じ速度で移動する。閾値の設定により、飛翔中は気温16.5℃以上の大気中を移動する。それ以下の温度領域に入った場合は16.5℃の等温度面に戻される。
- 出力として1時間ごとのウンカの空中相対密度が計算できる。
- 日本を覆う相対空中密度分布から飛来時刻と飛来地域が分かる。
- 数値予報モデルは過去の大気場を入力することができるため、1950年代以降の過去の飛来解析にも対応可能である。
成果の活用面・留意点
- 本モデルは農研機構との共同研究契約を結べば利用できる。
- 本手法は、Fortranの開発・実行環境のあるUNIX、またはLinuxの計算機上で動作するが、短時間で実行させるためには並列スーパーコンピュータが必要である。
- 入力する気象データは気象庁の全球客観解析データGANALや米国NCEPの再解析データなどの格子点データである。
具体的データ
その他
- 研究課題名:農業応用のための気象数値実験
- 課題ID:03-04-01-01-02-03
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2001~2003年度
- 研究担当者:大塚彰、渡邊朋也、鈴木芳人、松村正哉、古野朗子(原研)、茅野政道(原研)