バイオディーゼル燃料のグリセリンを副生しない製造法
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要約
本製造法は、原料の一つであるメタノールを超臨界状態にすることで触媒が不要となった。また、原料の混合比や反応時間を制御に
よりグリセリンの生成抑制と分解を同時に行うことでグリセリンを生成せずにバイオディーゼル燃料を製造することが可能となった。
- キーワード:バイオディーゼル燃料、グリセリン、超臨界メタノール、熱分解
- 担当:中央農研・作業技術研究部・農産エネルギー研究室
- 連絡先:電話 029-838-8909、電子メール wataru@affrc.go.jp
- 区分:関東東海北陸農業・作業技術、共通基盤・作業技術
- 分類:科学・普及
背景・ねらい
バイオディーゼル燃料(BDF)はカーボンニュートラルな軽油代替燃料として注目されつつあるが、その製造時には副産物として原料油
脂の10%程度のグリ
セリンが生成される。通常、このグリセリンには触媒や未変換の脂肪酸などが混入しており、有効な用途がない。また、酵素法や超臨界
法などにより純度の高い
グリセリンを得ることはできるが、現在の日本では供給過剰状態にあること、小規模分散型の変換設備では十分な量が得ることができな
いことなどから、その売
却、処分が非常に困難な状況にある。こうした状況を改善するため、グリセリンを生成しない新たなBDFの製造法を開発する。
成果の内容・特徴
- 本製造法は、エステル交換反応におけるグリセリン生成段階を抑制すると共に生成されたグリセリンは分解することにより、製品へ
のグリセリンの混入を防ぐことができる。
- 従来のアルカリ触媒法では必須であった原料の前処理、製品の中和・洗浄および洗浄水の浄化、副産物の分離等の工程が不要となる
(図1)。
- 反応温度320℃以上、反応圧力20MPa以上、反応時間3分以上、原料油脂:メタノールの混合比を容積比で1:2~2:1
とすることで単相の生成物が得られ、低沸点のアルコールを分離することでBDFとして利用できる。市販キャノーラ油を原料とし、圧力
40MPa、反応時間
4分、混合比1:1に設定した時、原料油に対する収率は最大120%となる(図2)。
- グリセリンの分解と同時に脂肪酸等を分解することにより燃料の粘度を低下させることが可能であり、反応温度を420℃以上と
することで従来のBDFと同等の粘度が得られる。また、反応圧力を増加させることで、必要な反応温度を低下させることができ、変換エ
ネルギーの減少が可能
となる(図3)。この時の組成は中鎖脂肪酸メチルエステル、長鎖脂肪酸メチルエステル、ジグリセライド、モノグリセライドおよびそ
の他脂肪族炭化水素からなり、グリセリンおよびトリグリセライドは含有されない。
- ナタネ油を原料として温度390℃、圧力40MPa、時間4分、混合比1:1に設定して製造したBDFのセタン価は51.6、引火点(PMCC)は136℃、流動点は-5.0℃となり、これらはBDFの規格(DIN 51 606等)を満たす。これを単気筒ディーゼルエンジンに用いた場合、無負荷、最大回転数条件下では軽油と比較してCO2は10%増加するが、NOx, HCは30~40%減少する(図4)。この時、目視では黒煙の減少が確認される。
成果の活用面・留意点
- 製造工程に水を必要としないため給排水設備が不要であり、移動体への搭載が容易となる。
- パーム油・動物油脂等、従来法ではBDF化が困難であった高融点油脂も利用が可能となる。
- モノグリセライド、高級アルコール等乳化作用がある成分を含むため使用時の水の混合に留意する。
具体的データ
その他
- 研究課題名:超臨界アルコール法による高効率バイオディーゼル燃料生産技術の開発
- 課題ID:03-10-04-01-02-03
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2002~2004年
- 研究担当者:飯嶋渡、小林有一、竹倉憲弘、谷脇憲
- 発表論文等:飯嶋渡、小林有一、谷脇憲(2003)特願2003-294521