飼料イネ専用品種の黄熟期収穫物におけるカリウム含量

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要約

飼料イネ専用品種の黄熟期収穫物における乾物当たりカリウム含量は、食用米生産より化成肥料や堆肥を多量に施用しても2%を下回る。マグネシウム及びカル シウムとの当量比[K/(Ca+Mg)]も、グラステタニー症の危険値とされる2.2を超えることは少ない。

  • キーワード:カリウム含量、飼料イネ、堆肥、多肥、稲発酵粗飼料
  • 担当:中央農研・関東東海総合研究部・総合研究第3チーム
  • 連絡先:029-838-8817、電子メールabekaoru@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・総合研究、関東東海北陸農業・関東東海・総合研究、関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

カリウム(K)含量の高い飼料作物では、カリウムに対するマグネシウムやカルシウム含量が低くなり、牛に給与した場合に、生理障害であるグラステタニー症 や低カルシウム血症が発生しやすくなることが指摘されている。そこで、食用米生産より化成肥料や堆肥を多量に施用するカリ(K20)投入量の多い条件で、 稲発酵粗飼料として利用される飼料イネ専用品種を栽培し、黄熟期に地際で刈り取った稲体(黄熟期収穫物)のカリウム等の含量を調査する。

成果の内容・特徴

  • 10アール当たり2トンの稲わら堆肥を施用した移植栽培において、飼料イネ専用品種の黄熟期収穫物における乾物当た りカリウム含量は、化成肥料を窒素およびカリとして10アール当たりそれぞれ27kg施用する極多肥条件で高まるが、乾物収量の増加が充分大きいため、牛 の飼養において望ましいとされる2%以下になる(図1)。
  • カリ肥料を施用せず、10アール当たり4トンの稲わら堆肥(カリ12.4kg含有)または2トンの牛糞おがくず堆肥(カリ45.3kg含有)を施用すると、初年目の黄熟期収穫物における乾物当たりカリウム含量は、いずれも1.1~1.4%の範囲に分布する(図2)。
  • 同じ栽培条件で比較すると、黄熟期収穫物の乾物当たりカリウム含量は、飼料イネ専用品種では「ホシアオバ」で高く、「クサホナミ」で低い。飼料イネとしての利用も想定される多収系統の「北陸193号」も、「ホシアオバ」同様に高い(図1、2)。
  • カリウム、カルシウムおよびマグネシウムの当量比[K/(Ca+Mg)]を計算すると、グラステタニー発症の危険性が高まる とされる2.2をほとんどの品種・栽培法が下回る。ただし、カリ肥料を10アール当たり27kg施用した5月中旬移植栽培の「ホシアオバ」や、6kg施用 した小麦跡移植栽培の「北陸193号」ではこの指標を上回る結果が得られている(図3)。

成果の活用面・留意点

  • この結果は、2000~2003年に中央農研谷和原水田圃場で得られた結果であり、2003年の堆肥施用前の作土の交換性カリ含量は乾土1kg当たり127mgと高くはなかった。したがって、異なる気象・土壌条件の下での栽培にそのまま適用することはできない。
  • カリ施肥量の及ぼす影響には窒素施肥量の及ぼす影響も含まれる。カリ施肥量単独での検討は行っていない。
  • 稲わら堆肥および牛糞おがくず堆肥の現物当たりカリ含量はそれぞれ0.31%、2.27%である。

具体的データ

図1 カリ施肥量が黄熟期における乾物当たりカリウム含量に及ぼす影響 (2000?2001年)

 

図2 堆肥施用法が黄熟期における乾物当たりカリウム含量に及ぼす影響(2002?2003年)

 

図3 乾物当たりカリウム含量とグラステタニー指標の関係(2001?2003年)

 

その他

  • 研究課題名:温暖地での堆厩肥利用による飼料イネの安定多収栽培技術の開発
  • 課題ID:03-01-06-*-05-03
  • 予算区分:ブラニチ3系
  • 研究期間:2003年度(2003~2005年度)
  • 研究担当者:阿部薫、石川哲也、井尻勉