アーバスキュラー菌根菌の機能を活用したトウモロコシの栽培管理法

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要約

不耕起栽培ではアーバスキュラー菌根菌の感染率が高まり、トウモロコシの窒素吸収、初期生育が促進する。トウモロコシの前々作や前作への牛糞堆肥の施用は、同菌の胞子密度や感染率には影響しないが、不耕起による生育促進の効果を助長する。

  • キーワード:アーバスキュラー菌根菌、不耕起、牛糞堆肥、前作、トウモロコシ
  • 担当:中央農研・耕地環境部・作付体系研究室
  • 連絡先:電話029-838-8532、電子メールyamahi@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・総合研究、作物・夏畑作物、関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

作物の前後作の組み合わせ適性にアーバスキュラー菌根菌(以下AM菌と記述する)が深く関与することが明らかにされている。しかし、作物の栽培に伴う各種 の管理法がAM菌に及ぼす影響については不明な点が多い。そこで、AM菌の特性、機能を活用し畑作物の生産性の向上をはかるため、耕起方法、有機物の施用 および作付の前歴と作物の生育、養分吸収に果たすAM菌の役割との関連について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 不耕起栽培では、ロータリ耕に比べてトウモロコシへのAM菌の感染率が高まる。特に、宿主作物(トウモロコシ-エンバク)跡では著しい(表1、2)。
  • トウモロコシの前々作または前作への牛糞堆肥の施用は、AM菌胞子密度やトウモロコシへの感染率には影響しないが、トウモロコシの初期生育を促進させ、その効果はロータリ耕に比べて不耕起で大きく、AM菌宿主跡で顕著となる(表2)。
  • 生育初期のトウモロコシの窒素吸収は、非宿主作物(ソバ-コマツナ)跡に比べ宿主作物跡で促進され、AM菌感染がトウモロコシの窒素吸収の向上に有効である(図1)。
  • トウモロコシの乾物収量は、前々作または前作の牛糞堆肥施用とAM菌感染に有利である不耕起栽培を組み合わせた場合に向上し、特に、同菌の非宿主作物跡では増収効果が大きい(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 本試験は淡色黒ぼく土の畑圃場で実施し、トウモロコシはデントコーンを用いた。
  • 不耕起・省耕起栽培の導入や堆肥施用のための基礎的知見として活用できる。
  • 土壌の種類や気象条件が著しく異なる地域およびトウモロコシ以外の畑作物では検討を要する。

具体的データ

表1 作付体系および施肥管理の概要

 

表2 トウモロコシ播種前の土壌窒素、AM菌胞子密度およびトウモロコシ播種後20日目のアーバスキュラー菌根菌感染率、播種後43日目のトウモロコシ乾物重

 

図1 トウモロコシ播種後20日目のアーバスキュラー菌根菌感染率と播種後43日目の窒素吸収量との関係

 

図2 トウモロコシの乾物収量

 

その他

  • 研究課題名:不耕起栽培・有機物施用条件下での畑作物の生育特性に関わるアーバスキュラー菌根菌の役割
  • 課題ID:03-05-01-02-02-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2003年度
  • 研究担当者:臼木一英、山本泰由、田澤純子