バイオジオフィルター水路によるロックウール栽培排液の浄化

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要約

窒素やリンを高濃度に含むロックウール栽培排液のバイオジオフィルター水路による浄化にはエンサイ、ソルガム、ポーチュラカが適している。施設面積の数% のバイオジオフィルター水路にエンサイ等を栽培することにより窒素・リン排出負荷を効率的に削減可能である。

  • キーワード:ロックウール栽培排液、バイオジオフィルター水路、窒素、リン、エンサイ
  • 担当:中央農研・土壌肥料部・水質保全研究室
  • 連絡先:電話029-838-8829、電子メールtota@affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

わが国の養液栽培施設面積は近年急激に増加しており、高濃度の硝酸性窒素やリン等を含む排液による環境負荷が懸念されている。特に、ロックウール栽培シス テムは、培養液を掛け流しするタイプが主体で、その2~4割が排出されている。培養液を循環利用して排液を出さない閉鎖系システムが望ましいが、現状のシ ステムの大幅な改変による経営上の負担、養分のアンバランス、病気の蔓延等の問題も指摘されている。そこで、当面は現状のシステムに容易に接続でき、養液 栽培排液中に残存する養分を他の作物生産等に再利用する簡易な浄化技術の開発が必要である。

成果の内容・特徴

  • 窒素やリンを高濃度に含むロックウール栽培排液の浄化に適した植物を水耕栽培(静止液法)で検索すると、窒素・リンともに吸収量が多い植物はソルガム、ポーチュラカ、エンサイ等である(表1)。
  • ゼオライトを充填し各植物を栽植したバイオジオフィルター水路に無機態窒素(NO3-Nが主体)濃度100~200 mg L-1のバラロックウール栽培排液を10~20 L m-2 d-1で流入させると、処理水濃度はソルガム栽植水路では30~130 mg L-1 (平均40%の濃度低下)、エンサイおよびポーチュラカ栽植水路では70~170 mg L-1 (平均25~30%の濃度低下)となる。また、エンサイ水路流出水のPO4-P濃度は、8月中旬以降7 mg L-1以下と流入水(5~15 mg L-1)より低く推移するが、ソルガムやポーチュラカ水路では濃度低下はあまり認められない (図1)。
  • 8月21日~10月の各水路の窒素除去速度は、ソルガム、エンサイ水路が2.0 g m-2 d-1(除去率57~63%)と高く推移し、また、リン除去速度はエンサイ水路が高く、8月21日~10月には、0.20~0.23 g m-2 d-1(除去率71~91%)となる(図2)。
  • エンサイ水路の試験期間の平均窒素・リン除去速度を基に試算すると、暖候期においては、ロックウール栽培施設面積の3.5% (10 a当たり35 m2)のバイオジオフィルター水路により、施設から排出される窒素(68.8 g/10 a/日)の65%、リン(5.8 g/10 a/日)の90%が浄化可能である。

成果の活用面・留意点

  • 本水路はロックウール栽培排液からの窒素・リン負荷量削減には有効であるが、植物の蒸発散により処理水濃度が十分に低下しない場合がある。処理水の濃度をさらに低下させるためには他の浄化法との併用等も検討する必要がある。

具体的データ

表1 ロックウール栽培排液の浄化に適した植物の検索

 

図1 バラロックウール栽培排液浄化試験における流入水および流出水濃度の変化

 

図2  バラロックウール栽培排液浄化試験における期間ごとの窒素・リン負荷速度および除去速度の変化

 

その他

  • 研究課題名:養液栽培排液の資源循環型水質浄化技術の開発
  • 課題ID:03-06-06-01-02-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:阿部薫、太田健、前田守弘、井原啓貴、平賀昌晃(岩手農研)、常盤秀夫(福島農試)、尾崎保夫
  • 発表論文等:
    1)阿部ら(2003) 土肥誌、74:273-279
    2)常盤ら(2003) 土肥誌、74:207-210