籾殻の熱分解特性およびケイ酸資材として有効な籾殻灰の簡易判定法
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要約
ケイ酸資材として価値の高い400℃で焼成した籾殻灰は、有機物成分が10%程度残存する、シリカが結晶化しておらず溶解しやすい、水溶液酸性化の原因となるカルボキシル基が少ないなどの特性を持つ。このような特性を持つ籾殻灰を見分けるには色測定が有効である。
- キーワード:籾殻、籾殻灰、熱分析、赤外分光分析、色
- 担当:中央農研・土壌肥料部・土壌診断研究室・中央農研・土壌肥料部・土壌管理研究室
- 連絡先:電話029-838-8901、電子メールmoriizu@affrc.go.jp
- 区分:共通基盤・土壌肥料
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
籾殻は、カントリーエレベーターに集まるバイオマスで、収集の手間がかからない有機資材である。籾殻の有効利用法のひとつとして、燃焼による熱エネルギーの利用と籾殻灰の利用が想定される。Prakash and Itoh(2003)によると、400℃で焼成した籾殻灰を水稲に施用すると籾殻無施用区に対し収量が20%増加したことが認められ、ケイ酸資材として籾殻灰が有効であることが確認されている。本研究は、燃焼温度による籾殻灰の多様性に注目し、その熱分解特性を明らかにするとともに有効籾殻灰の簡易判定法を提案する。
成果の内容・特徴
- 籾殻試料では、空気雰囲気下の分解過程が大きく2段階(280℃付近、400℃付近)に分かれている(図1)。280℃付近のDTG*のピークは、セルロースやヘミセルロース、400℃付近のピークはセルロースやキシランの熱分解の特徴と一致する。ケイ酸資材として価値の高かった400℃焼成籾殻灰は,セルロース等の難分解成分がほぼ分解した状態であると考えられる。また、400℃で焼成した籾殻灰では、有機物成分が10%程度残存する。
*熱重量変化曲線(TG)の1次微分曲線
- 籾殻灰の有機物成分は、焼成温度が高いほど減少するが、官能基により減少過程に差が認められた。特に、カルボキシル基は焼成温度400℃以上の加熱条件では消失する(図2)。カルボン酸は水に溶解すると弱い酸性を示し、非晶質シリカの溶解度が下がる原因となる。カルボキシル基が残存する焼成灰は資材としては適当ではない可能性があるため、ケイ酸資材としては400℃以上の焼成が望ましいと考えられる。
- 籾殻の焼成温度が上がるとSi-OH(970cm-1のピーク)が相対的に減少しており(図3)、籾殻中に含まれる非晶質シリカの脱水縮合反応が起きている。焼成温度600℃以上の試料では、Si-OHが認められなくなる。シリカの溶解速度は、脱水が進んだものほど遅いので、ケイ酸資材として速効性を期待するためには、500℃以下の焼成が望ましい。
- 資材として有効性の高い400℃焼成籾殻の色はL*=40,b*=3であり、他の焼成温度のものとは明らかに区別できる(図4)。野外で有効性の高い籾殻灰を簡易に判定するには色測定が有効である。
成果の活用面・留意点
- 分析に用いた試料は、各温度で一定時間(3時間)マッフル炉で加熱焼成したものである。
- 分析に用いた試料は、ササニシキである。色は水稲の品種により若干の差が認められる。
(IR36の場合、ササニシキに比べ、L*が5程度、a*が1程度、b*が1程度低かった。)
- 色の判定にはカラーチャートを使用することも可能である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:熱分析などを用いた土壌有機物分解過程の簡易診断法の開発
- 課題ID:03-06-02-*-10‐04
- 予算区分:精密畑作
- 研究期間:2003~2007年度
- 研究担当者:森泉美穂子、草場 敬、伊藤純雄
- 発表論文等:森泉ら(2004)日土肥誌75:609‐612.