大豆や水稲の植被率をデジタルカメラで簡便に測定するシステム

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要約

デジタルカメラで大豆や水稲を分光撮影した画像から、PDAにて植物体のみを抽出することで植被率を算出できる計測システムである。安価にシステムを構築でき、小型軽量なため携帯して簡便に調査できる。

  • キーワード:ダイズ、イネ、植被率、デジタルカメラ、PDA、画像処理、近赤外
  • 担当:中央農研・北陸水田利用部・作業技術研究室
  • 連絡先:電話025-526-3236、電子メールomine@affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・作業技術、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

大豆や水稲の生産では圃場内の生育むらが、収穫物の品質むらに直接影響するため栽培期間中における生育量の把握が重要である。水稲や大豆の生育量としてLAIや植被率などを計測・推定できる市販の測定器が数種類あるが、導入コストや計測条件・仕様などの面で営農現場などにおける利用は少ない。そこで、改造した市販のデジタルカメラとPDAを用い、圃場に携帯して一人で簡便に植被率を測定できる技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 植被率カメラ計測システムは、近赤画像を撮影・保存するデジタルカメラと撮影した画像から植被率を求めるPDAから構成されている(図1)。システム全体が作業着のポケットに入るほど小型軽量であり、圃場に携帯して一人でも簡便に植被率の調査ができる安価な計測システムである。
  • デジタルカメラは、レンズ部分から赤外カットフィルタを除き、近赤外830nmのガラスフィルタを追加・改造した仕様である(表1)。露出時間などの撮影条件は自動設定されるため、操作は容易である。PDAには本システム用に開発した画像処理ソフトウェアが入っており、キーボードレスで全ての操作ができ、屋外での調査に適している。
  • 画像撮影は対象物の地上1.5mの位置で鉛直下方向に撮影する(図2左)。撮影可能面積は約1m2である。撮影された近赤外画像は、植物体のみが明るく地上面などは暗くなっており(図2中央)、SDメモリカードにてカメラからPDAに転送する。
  • PDAの専用ソフトウェアは、(1)画像読込・表示、(2)画像処理(二値化による植物の抽出)、(3)植被率(任意面積に対する植被割合)の算出・表示ができる(図2右)。また、(4)任意領域で抽出(四角形または円形)・回転することもでき個体毎の調査などが可能である。二値化の閾値は、判別分析法(大津の方法)を用い自動決定している。
  • 植被率の測定精度は、大豆で2乗平均平方根誤差RMSE=3%以下、水稲でRMSE=4%以下であり、面積比が既知の平面サンプルではRMSE=0.5%以下である(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 支持フレームを装着した作業機械にカメラを搭載して計測可能である。
  • 高照度条件では、乾燥した畑土や麦稈、葉上の影などが誤差となる場合があるが、遮光や散水などによってそれらの反射光量を減らすことで誤差を軽減できる。
  • (有)木村応用工芸にて市販されている。

具体的データ

図1 植被率カメラ計測システム 表1 システムの仕様

 

図2 撮影から植被率までのフロー

 

図3 植被率の測定精度

その他

  • 研究課題名:大豆等の生育情報センシング技術の開発
  • 課題ID:03-11-06-01-05-04
  • 予算区分:精密畑作
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:大嶺政朗、帖佐 直、細川 寿、木村昭彦(木村応用工芸)、柴田洋一(帯広畜産大学)