γ-アミノ酪酸(GABA)が多い発芽玄米用糖質米品種「あゆのひかり」

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要約

「あゆのひかり」は寒冷地南部では中生の中に属する粳種で、短稈、偏穂重型の糖質米品種である。重量当たりのGABA含量が一般品種の3倍前後で、水溶性多糖(植物グリコーゲン)を乾物重当たり30%蓄積することから、発芽玄米および発芽玄米を添加したおにぎり、顆粒状食品等機能性食品としての加工利用が期待される。

  • キーワード:イネ、機能性成分、GABA、発芽玄米、糖質米
  • 担当:中央農研・低コスト稲育種研究北陸サブチーム
  • 連絡先:電話025-526-3239、電子メールseigo@affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作、作物
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

近年、消費者の健康志向から、血圧降下作用のあるGABAを豊富に含む発芽玄米は、広く普及している。そこで、発芽玄米の一層の消費拡大を図るため、GABAの量が多く、嗜好性を高めた発芽玄米用品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「あゆのひかり」は、1989年中央農業総合研究センター・北陸研究センター(旧北陸農業試験場)において新形質米品種の育成を目的として、糖質変異系統の「EM5」と「奥羽331号」(後の「ふくひびき」)を交配した後代から育成された糖質米系統である。
  • 出穂期は「コシヒカリ」より3日程度遅く、育成地では"中生の中"、成熟期は出穂後30日を目途とするため "早生の晩"に属する粳種である。
  • 稈長は "短"、穂長は中"、穂数は "やや少"、草型は"偏穂重型"で、脱粒性は"難"である。
  • 玄米の厚さは約1.5mmで極薄く、千粒重は15g程度と極軽く、収量は、「コシヒカリ」、「キヌヒカリ」より少なく、これらの品種の約60%である。
  • 発芽時の重量あたりのGABAの含有量は、「コシヒカリ」の3倍前後であり、水溶性多糖(植物グリコーゲン)を、乾物重あたり約30%含有する。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子はPiaPibを併せ持つと推定され、葉いもち圃場抵抗性は"やや強"、穂いもち圃場抵抗性は不明である。穂発芽性は"極易"、障害型耐冷性は"弱"である。
  • 出穂後27日目から、籾の発芽率が上昇し、一方、籾重は、出穂後27日前後まで増加し、その後、一定となるので(図1)、出穂後25日を目途に収穫することで、穂発芽による品質低下を防ぐことができる。

成果の活用面・留意点

  • 多量のGABAと水溶性多糖の甘みを持つ特性を活かし、発芽玄米、発芽玄米を添加したおにぎり、顆粒状食品等機能性食品の加工利用素材としての普及を図り、米の需要拡大に繋げる。
  • 適応地域は「コシヒカリ」等の熟期の作付が可能で、冷害の危険性の少ない東北南部、北陸および関東以西である。
  • 穂発芽による品質低下を防ぐため、出穂後30日を目途に収穫する。
  • 粒厚が極端に薄く、通常の選別が困難なため、適期刈り取りに努め、着色米の発生を最低限に抑える。また、胴割れ米を防ぐため乾燥調整に留意する。
  • PiaPib のいもち病真性抵抗性遺伝子を持つため、現在のところ、いもち病の発病は認められないが、いもち病菌の新レースの出現による発病の可能性があるため、発病が認められた場合、直ちに防除を行う。
  • 籾重が軽いため、苗箱あたりの播種量を一般品種の7割程度とする。

具体的データ

表1.「北陸169号」の栽培特性一覧

 

表2.「北陸169号」のγ-アミノ酪酸

 

図1.「北陸169号」の出穂後日数と穂発芽籾率、籾重および青米率の関係

その他

  • 研究課題名:寒冷地向き低アミロースを主体とした新形質米品種の育成
  • 課題ID:03-12-01-01-08-04
  • 予算区分:ブランドニッポン5系、重点研究強化費、21世紀プロ5系、次世代稲作、新形質米
  • 研究期間:1989~2005年度
  • 研究担当者:三浦清之、笹原英樹、後藤明俊、重宗明子、上原泰樹、小林 陽、太田久稔、清水博之、
                      福井清美、小牧有三、大槻 寛