稲作経営のための商品在庫管理支援ツール「商品在庫管理表」

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要約

「商品在庫管理表」は、米を通年販売する稲作経営が販売・仕入計画の策定や変更、販売・仕入実績の入力等を行うことによって、後に商品在庫がどれくらい過不足になるか推定するツールであり、在庫処分や仕入れの増加などの意思決定を支援できる。

  • キーワード:マーケティング管理、在庫管理、稲作経営、米
  • 担当:中央農研・北陸総合研究部・農業経営研究室
  • 連絡先:電話025-526-3231、電子メールjsameft@affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・経営、共通基盤・経営
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

米を自力で通年販売している大規模稲作経営では、適切に商品在庫管理を行うことが重要であり、そのためにパソコンを利用することが有効である。しかし、市販のソフトウェアは調達期間が短い一般の小売店等を対象とした設計がなされており、米生産が1年1作であるという調達期間が長い稲作経営の特徴は反映されていない。そこで、これらの特徴を考慮し、稲作経営の商品在庫管理支援ツール「商品在庫管理表」を開発する。

成果の内容・特徴

  • 「商品在庫管理表」は、1カ月を単位として稲作経営の販売・在庫量を管理するためのツールである。その主な目的は、商品在庫の過不足を的確に察知することにある。本ツールは、販売計画の策定において、過去の実績などから既存の販売先ごとに1年分の販売量をユーザーが推測し、これを「見込在庫」として設定することによって、必要な在庫を確保することを基本としている。そして、この販売計画と販売実績から、商品在庫の過不足を推定する。
  • 本ツールは、マイクロソフト社の表計算ソフト「エクセル」を用いて作成した。具体的構造は、1品目1ファイルを用い、そこには5つのシートが含まれている(図1、2)。利用に当たっては、月別・取引先別の[1]販売・仕入計画の作成、[2]販売・仕入実績の入力、[3](必要に応じて)販売・仕入計画の変更、という手順を踏む。
  • 外部からの仕入れを加えて販売を拡大しているB社の2003年産の品目b1への適用例に基づくと、本ツールの利用場面は次のように示される。まず、販売担当者が上記[1]~[3]の作業を実施すると、これらの取引先のデータは自動的に集計される。例えば、12月の時点では12月までは実績値を、1月以降は計画値を用いて総販売量及び取扱在庫総量が集計される。このケースでは、12月の時点における両者の比較によって、翌年の6月には在庫量が不足することが予測できる(図3)。ただし、これらの集計値は、各販売先の数値の合計であるため、実態に沿った予測につながるためには、各販売先で当初の計画と実績に開きがある場合、年度途中で当初の計画を変更する作業[3]を適切に実行することが必要である。
  • この適用を例にすれば、ユーザーはこれらの情報に基づいて、12月以降の仕入れ量を増やすか、あるいは販売を抑制する対策などを念頭に、総販売量と取扱在庫総量が一致するように品目b1全体の計画を再度見直すことが重要である。

成果の活用面・留意点

  • 本ツールのユーザーは、販売量が多く、通年販売を行い、商品在庫の量的管理が重要な局面にある稲作経営である。
  • 本ツールには、新規の販路開拓の可能性も考慮した在庫を見込在庫とは別に設定できる仕組みもある。
  • 本ツールは、ユーザーの使用環境に応じてシートの大きさや関数などをカスタマイズする必要があるため、試験的配布は可能である。

具体的データ

図 1 商品在庫管理表の構造

図2 商品在庫管理表ファイルの画面 図3 B社における品目b1の取扱在庫総量と販売総量に関する予測

その他

  • 研究課題名:稲作経営におけるマーケティング管理方式の解明
  • 課題ID:03-02-03-01-04-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2004年度
  • 研究担当者:齋藤仁藏