GPS仮想基準点補正データ受信システムを利用した無人田植え作業
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要約
GPS仮想基準点補正データ受信システムの利用により、無人田植機に搭載したRTKGPS移動局受信機1台で基準局を設置した場合と同等の精度で位置計測を行うことができ、これまでと比較して簡易に、また低コストに無人田植え作業を行うことができる。
- キーワード:GPS、仮想基準点、補正データ、自動作業、無人田植機
- 担当:中央農研・作業技術研究部・機械作業研究室
- 連絡先:電話029-838-8813、電子メールzentei@affrc.go.jp
- 区分:共通基盤・作業技術、関東東海北陸農業・作業技術
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
位置計測にRTKGPSを利用した無人田植機による移植作業は可能だが、±2cmの高精度で位置計測するには、基準局と移動局の2台の受信機を用意する必要があり、現在は非常に高コストである。近年、GPS仮想基準点補正(VRS)データ配信が開始され、仮想的に設けられた基準局からの情報を利用して、1台のRTKGPS受信機で高精度な測位を行うことが可能になっており、データ配信会社と通信を行うことができる範囲であれば、離島を除く北海道から沖縄までの全国どこでも使用できる。そこで、無人田植機の低コスト化、操作の簡便化のため、簡易に仮想基準点補正データを受信して利用するための受信システムを試作し、無人田植え作業に適用する。
成果の内容・特徴
- 試作したGPS仮想基準点補正データ受信システムは、図1に示すように、携帯電話、モデム及び回線接続装置から構成されている。回線接続装置は図1の動作手順に従ってデータ配信会社に接続し、GPS受信機の補正データ受信ポートへ仮想基準点補正データを送信する。
- 30分間の定点観測試験では、図2に示すようにほぼすべてのデータが基準局を利用したRTKGPSと同様の±2cmの範囲に収斂する。
- このシステムを利用することにより、作業速度0.6m/sで行った移植実験では、RTKGPS基準局を設置する場合よりわずかに精度は劣るが、30a区画圃場一筆の無人田植え作業を行うことができる(写真1,図3)。
- 基準局の設置にかかる労力を省くことができ、無人田植機のGPS受信機1台分程度の低コスト化を図ることができる。具体的には、田植機を200万円、自動化改造費(含むコンピュータ)を100万円、GPS受信機を200万円、姿勢センサを100万円とした場合、RTKGPS基準局設置の場合800万円初期費用が必要だが、仮想基準点利用の場合初期費用は600万円となる。このほかデータ配信料と通信料合わせて4万円/月としても、田植機の使用期間は2ヶ月程度であるので、基準局を設置する場合の3/4程度のコストになる。
- 無人田植機は、通信条件などにより仮想基準点補正データが得られない場合、自動的に作業を一時中断して停止する。
成果の活用面・留意点
- RTKGPSを利用していた用途、自動作業等に利用することができる。
- 利用のためにはGPS仮想基準点補正データ配信会社との契約、携帯電話の契約が必要であり、データ配信料、通信料が必要である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:センサ融合による自動作業のための最適車両制御技術の開発
- 課題ID:03-10-05-**-12-04
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2003~2005年度
- 研究担当者:長坂善禎、金谷 豊、梅田直円、国立卓生
- 発表論文等:Nagasaka et al.(2004) Computer and Electronics in Agriculture 43: 223-234.