重粘土地域における暗渠疎水材もみ殻の腐敗と渠溝の空洞化

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要約

排水性の悪い重粘土地域では、畑転換が暗渠疎水材もみ殻の腐敗に及ぼす影響は小さい。腐敗に伴う渠溝の空洞化は、もみ殻の腐敗程度が高いほど、また渠溝幅が施工後に縮小していないほ場ほど著しく、最短で施工後8年で発生し、12年で多発する。

  • キーワード:圃場整備、暗渠排水、重粘土水田、疎水材、もみ殻
  • 担当:中央農研・北陸水田利用部・水田整備研究室
  • 連絡先:電話025-526-3233、電子メールsyoshida@affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

暗渠へ向かう通水部を確保するため、透水性の良い「疎水材」が、暗渠管敷設後の溝に充填される。疎水材の種類は、地域によって差異はあるものの、多くの地域でもみ殻が使われている。もみ殻の耐久年数は、水田として利用した場合には10年、畑にした場合には5年と言われる。しかし、気候、土壌条件や乾湿の条件などにより、耐久年数には大きな幅がある。疎水材もみ殻の腐敗が進むと、条件によってはそれらが沈下し、上部に空洞が生じる。空洞が発生すると、水田として利用する際に地表面が陥没し、湛水に支障を来したり、機械が脱輪事故を起こしたりするため、その予測や対策が望まれている。そこで、降水量が多く、排水が悪い北陸地域の重粘土水田におけるもみ殻の腐朽の実態を明らかにするとともに、その空洞化への影響を現地調査に基づき整理する。

成果の内容・特徴

  • もみ殻の腐敗は、平均的に見れば徐々に進行し、早いところでは8年経過した頃に腐敗度70%程度(細粉化した状態)に達する。(図1)。ただし、地区により腐敗の進行が緩やかなところもある。
  • 降水量が多く、排水が悪い粘土質のほ場においては、畑転換がもみ殻の腐敗に及ぼす影響は非常に小さい(図2)。
  • もみ殻疎水材の腐敗に伴い、もみ殻疎水材層の現場密度は低下する。その結果、鉛直方向の圧縮を受けやすくなり、上部に空洞が発生する(図3)。空洞は、最短で施工後8年で発生し、12年で多発する(図4)。
  • 腐敗が進行しても、渠溝幅の縮小が著しいところでは空洞は発生しにくい。渠溝幅10cmならば腐敗度70%,渠溝幅7cmならば腐敗度85%以上になると高い確率で空洞が発生する(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 暗渠の施工・維持管理技術に関する検討資料として活用される。
  • 本成果は、降水量が多く、排水が悪い粘土質の圃場が多い地域(新潟県上越市頸城区)における暗渠疎水材もみ殻の腐敗の実態を明らかにしたものであり、気候や土壌条件が大きく異なる地域においては、腐敗の進行速度や空洞の発生、これらに及ぼす畑転換の影響に関して、異なる調査・研究結果も報告されている。

具体的データ

図1 もみ殻の腐敗度の経年変化 図2 数量化I類による腐敗度の解析結果

 

図3 腐敗度ともみ殻層の現場密度 図4 渠溝幅・もみ殻腐敗度と空洞化

その他

  • 研究課題名:暗渠疎水材モミガラの耐久性の解明
  • 課題ID:03-11-05-01-03-03
  • 予算区分:北陸農政局委託
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:吉田修一郎、足立一日出
  • 発表論文等:吉田修一郎、足立一日出 (2005) : 重粘土水田における暗渠疎水材もみ殻の劣化と渠溝の空洞化、
                      農業土木学会論文集、235号: 25-33.