品質むらモニタリングのためのコンバインによる分析試料回収方法

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要約

コンバインタンクから誘導管により一部の収穫物を外部へ取り出すことで品質分析のための試料を回収する。GPSを用いることで任意の位置での試料回収が可能である。回収した試料を分析することで品質のばらつきを把握できる。

  • キーワード:コンバイン、品質むら、試料、回収、精密農業
  • 担当:中央農研・北陸水田利用部・作業技術研究室
  • 連絡先:電話025-526-3236、電子メールtchosa@affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・作業技術、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

これまでにコンバインによる収量計測システム(H14年度成果情報)を開発し、大区画圃場における収量むらの把握やその是正が可能となった。さらなる高品質化のためには、収量情報のみでは不十分で圃場内の品質のばらつきを把握して局所的な窒素吸収の過不足を補正する施肥を行わなければならない。しかし、坪刈りや人力での試料回収による品質むらの把握では非効率的であるため、大区画圃場に対応した偏りのない方法が必要である。そこで、収穫時のコンバインに装着可能な分析試料の収集装置を開発する。

成果の内容・特徴

  • コンバイン装着型試料回収装置は、コンバインタンクから外部へ収穫物の一部を試料として誘導する円筒状の管(誘導管)、誘導された試料を受けるカップ(回収カップ)、回収カップを連続的に供給するターンテーブルで構成される(図1)。
  • 誘導管は斜めにコンバインタンクに挿入し、タンクへ搬送された収穫物の一部を管に沿った落下によりコンバイン外部へ導く(図2)。誘導管の端(タンク内部)は斜めに切断した切り込みが入れられているため、誘導管の回転で外部へ誘導する試料の量を調節するとともに、その誘導を停止することもできる。誘導管を経て排出された試料はターンテーブルに並べられた回収カップに集められる。
  • 収穫作業中には、GPSにより刈り取り位置を認識し、あらかじめ設定した位置を通過するとパソコンから制御信号を出力してターンテーブルを駆動するモータを動作させる。モータの停止位置は、各回収カップ横の穴に反応するリミットスイッチにより判断し、シーケンサによりモータの動作信号をoffにする(図3)。これにより、任意の位置に対応した試料を連続的に回収する。
  • コンバイン収穫作業を行いながら、開発した試料回収装置により全収量の約1~3%の試料を回収できる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 回収した試料についてタンパク含量など品質に関する分析を行うことで、圃場内の品質のばらつきを把握することができる。
  • ターンテーブルに並べる回収カップの数は制限(開発機では8個)があり、多くの試料が必要な場合は動作中に回収カップを並べ替える必要がある。
  • 例えばF社の近赤外透過による成分計でタンパク含量を計測する場合1点の回収試料は最低約95 cc必要であり、開発機では1点最大275ccの試料回収が可能である。

具体的データ

図1 コンバイン装着型の試料回収装置の概要 図2 試料回収のしくみ

 

図3 ターンテーブル制御の流れ 表1 試料回収の例

その他

  • 研究課題名:麦用コンバイン収穫モニタリング技術の開発
  • 課題ID:03-11-06-01-04-04
  • 予算区分:精密畑作
  • 研究期間:2003-2007年度
  • 研究担当者:帖佐 直、大嶺政朗、細川 寿、柴田洋一