ベンタゾンを茎葉処理した大豆品種エンレイ・タチユタカの初期薬害症状と収量

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要約

ベンタゾンは、大豆の展開した葉に初期薬害症状(薬斑、黄化・褐変、縮葉)を引き起こす。その程度は品種間で差があり、タチユタカはエンレイよりも初期薬害の程度が大きく現れ、回復が遅い。しかし、両品種ともに、新たに抽出してくる葉には薬害症状は現れず、収量、品質の低下はほとんどない。

  • キーワード:ダイズ、エンレイ、タチユタカ、除草剤、薬害、収量、品質
  • 担当:中央農研・耕地環境部・畑雑草研究室
  • 連絡先:電話029-838-8426、電子メールnarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・雑草、関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

我が国の大豆栽培では、生育期に発生する広葉雑草が大豆の収量や品質を低下させる大きな原因となっている。現在、生育期の広葉雑草対策としては、中耕による機械的防除、非選択性茎葉処理型除草剤の畦間散布による化学的防除があるが、いずれも省力性等に問題があり、大豆生育期に使用できる広葉雑草対象除草剤の登録が求められている。
ベンタゾンは諸外国で大豆生育期の広葉雑草対象除草剤として長年利用されているが、展開葉に一過性の薬害を引き起こし、その程度は品種によって異なることが明らかとなっている。ベンタゾンが日本の大豆品種に及ぼす影響についてデータを蓄積するため、ベンタゾンに対する感受性の異なる品種エンレイとタチユタカを用いて、処理後1週間程度の初期薬害症状と回復の特徴や収量へ及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • べンタゾンは大豆の展開した葉に対してエンレイでは薬斑(図1a)、タチユタカでは黄化・褐変や縮葉(図1b)といった初期薬害症状を引き起こす。タチユタカはエンレイより初期薬害の程度が大きく現れる。薬斑は下位葉、縮葉は最上位葉で多く見られる。しかし、両品種ともに、新たに抽出してくる葉には薬害症状は現れないため、処理21日後には正常な葉で覆われ、生育は回復する(図1c,d)。
  • エンレイは回復が速く、年次、処理時の大豆葉齢、薬量による変動が小さい(表1)。
  • タチユタカは回復が遅く、処理21日後において下位の褐変葉の落葉等による生育量の減少や収穫期まで主茎長の伸長抑制(薬量300ml/10a)が見られる場合もあり、年次、処理時の大豆葉齢、薬量による変動が大きい(表1)。
  • 両品種ともに、2~3葉期、6~7葉期にベンタゾン処理によって初期薬害症状が引き起こされても、子実重や品質(百粒重、蛋白質、脂質、糖含量)の低下はほとんどない(表1,脂質と糖のデータは蛋白質含量と同じ傾向のため略)。

成果の活用面・留意点

  • ベンタゾンを大豆に使用する際の参考資料とする。
  • 本成果は、茨城県つくば市の2003年(低温年)と2004年(高温年)に得られたものであり、地域によって薬害症状と収量の関係は異なる可能性がある。

具体的データ

図1. ベンタゾンによる初期薬害と回復状況

 

表1. ベンタゾンが大豆の生育・収量・品質に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:大豆不耕起栽培における生物多様化を活用した病害虫及び雑草防除技術の開発
  • 課題ID:03-01-01-01-18-04
  • 予算区分:ブラニチ2系
  • 研究期間:2003~2004年度
  • 研究担当者:澁谷知子、與語靖洋