過乾燥となる重粘質土壌でのダイズ種子の発芽に適した播種方法

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要約

播種床が過乾燥となりやすい重粘質土壌では発芽に必要な水分ポテンシャルを長く維持するために、耕うん同時播種等により耕うんによる乾燥が進む前の土壌に播種し、鎮圧処理によって下層からの水分供給を促し乾燥速度を低下させることが有効である。

  • キーワード:ダイズ、耕うん、吸水、発芽、播種床、鎮圧
  • 担当:中央農研・北陸総合研究部・総合研究第2チーム
  • 連絡先:電話0255-26-3235、電子メールtomoki@affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・北陸・総合研究、共通基盤・土壌肥料、共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

北陸地域は砕土性が劣り、植物にとっての有効水分保持量が小さい重粘質土壌が広く分布している。またダイズの播種時期である5月下旬から6月中旬は降雨が少なく、土壌が最も乾く時期の一つである。このような条件からダイズの播種床は過乾燥となりやすく、出芽不良が大きな問題となっている。ここでは、このような過乾燥条件を想定し、発芽に必要なダイズ種子の吸水条件、および作業機による耕うん・鎮圧が播種床の乾燥に及ぼす影響について整理し、発芽に適した播種方法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ダイズ種子は水分ポテンシャルが-1.4MPaに達した時点から発芽を開始し、根を伸長させる(図1)。発芽までの期間、土壌がこの水分ポテンシャルを維持する必要があるため、-1.4MPa付近を限界水分点と定められる。
  • ほ場においては耕うん後、土壌水分は指数的に低下し2.4~4.1日で限界水分点以下となる(図2)。耕うんから播種までの時間が短くなるほど土壌水分は指数的に高まり、種子の吸水には有利な条件となる。
  • 耕うん後、無鎮圧では土壌の表面が急激に乾燥するが、播種機の鎮圧ローラーにより鎮圧されると、表層と下層との土壌水の毛管が連結し、下層からの水分供給により、播種位置(深さ1~4cm付近)の土壌水分は安定的に高水分で維持される(図3)。この結果、鎮圧処理により土壌の乾燥速度が20%低下し(図2)、ダイズの吸水・発芽が促進される(図4)。
  • 耕うんと播種が二行程の場合、耕うん後播種までの期間は無鎮圧状態となる。鎮圧による土壌水分の保持という面からも耕うん直後に播種・鎮圧を行う体系が優れる。

成果の活用面・留意点

  • 発芽・苗立ちを安定化させる為の作業技術方策を考える際に活用できる。
  • 鎮圧処理が強いと通気性が悪化し酸素欠乏・湿害が生じる恐れがあるので注意を要する。
  • 上記の結果を得た条件は、品種はエンレイ、土壌型は細粒質斑鉄型グライ低地土、表層5cmの砕土率は86%、平均地温は22℃、鎮圧強度は6kPa、鎮圧土壌の仮比重は0.70g/cm3、無鎮圧土壌の仮比重は0.61g/cm3である。また、耕うんにはアップカットロータリーを用いた。
  • 3の条件でダイズの発芽に必要な日数は4日が目安であったが、砕土率および種子の大きさ等によって値は変化する。

具体的データ

図1.ダイズ種子の水分ポテンシャルと発芽との関係 図2.耕うん後の播種床の乾燥

 

図3.鎮圧区と無鎮圧区における土壌含水比の鉛直方向プロファイルの変化 図4.鎮圧処理による種子の発芽の改善

その他

  • 研究課題名:低湿重粘土壌の養水分環境を最適化する土壌管理技術の開発
  • 課題ID:03-02-02-01-08-04
  • 予算区分:ブラニチ2系
  • 研究期間:2003~2005年度
  • 研究担当者:高橋智紀、細川 寿、松崎守夫、片山勝之